WBC世界ライトフライ級タイトルマッチが24日、大阪エディオンアリーナで行われ同級1位・久田哲也は、王者・寺地拳四朗の前に判定負けを喫した。
序盤は互角の戦いを見せたが、2R、拳四朗がワンツーを決めてダウンを奪ったことでペースを握り、判定は3-0で王者に軍配が上がった。
試合から一夜明けた25日、久田は筆者の独占インタビューに応じてくれた。全力を出し切った様子の挑戦者は「悔いはありません」と切り出し、穏やかな声で王者の強さを分析した。
「ジャブから殺気が消えていて、非常に見えづらい。見合っている瞬間にパッと飛んでくるので気配がなくて見えないんです。破壊力はそんなにないですが、パンチがスムーズにくるので避けづらいのだと思います」
— 久田 哲也👊ボクサー (@hisadaboxing) April 24, 2021
(▲試合中、眼窩底骨折の重傷を負うも、最後まで戦い続けたという)
拳四朗は、跳ねるようなリズムを取りながら独特のタイミングでパンチを打ち込んでくる。スピードがあるわけではないが、モーションを工夫してタイミングが掴みにくいのだろう。
「非常にパンチを当てづらく、かわされ続けると焦りが出てきます。強引に入ろうとすると、右のアッパーやストレートを合わせてくる上手さもあって、とにかくやりづらい相手でした」
2019年の世界戦で敗れて以来、久田は遠い距離での戦い方を訓練してきた。実際に序盤はそれが功奏している。
しかし、拳四朗の危機回避能力とフットワークを使った上手さはそれをさらに上回ってきたようだ。
久田は同級WBA王者・京口紘人とも対戦経験がある。拳四朗は統一戦も口にしており、いずれ両者の対戦は必至。その行方をこのように予想する。
「自分に比べて京口選手の方が、踏み込みや打っていくときの思い切りの良さはすごい。パンチを当てられるし、接近にも持っていける。どちらがが勝つかはわからない。かなり競った熱戦になるでしょう」
同階級の二人の日本人王者に連敗し、久田は現役引退を表明した。
「長い現役生活の中で色々な人と出会い、支えられたことが一番の財産になりました。これからは未定ですが、どの道を選んでも熱く一生懸命生きたい。ボクシングで培った、不屈の精神はこれからも人生のモットーです」
世界王座にはあと一歩届かなかったが、不屈の精神で4回戦からキャリアを築いてきた男に大きな拍手を送りたい。
彼の思いを拳で受け取ったであろう、ライトフライ級両王者による今後の熱戦にも期待したいところだ。
久田哲也(ひさだ・てつや)
大阪府堺市出身、36歳、ハラダボクシングジム所属、第40代日本ライトフライ級王者。戦績は46戦34勝(20KO)10敗2分。
寺地拳四朗(てらじ・けんしろう)
京都府城陽市出身、29歳、B.M.Bボクシングジム所属、現WBC世界ライトフライ級王者。戦績は18戦18勝(10KO)0敗。現役日本人世界王者で最多記録である8回の防衛に成功している。
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