「全体的に進化してます。パンチのスピードもついてきました」
昨年、所属ジムを移籍した元WBO世界王者の木村翔は成長の手ごたえを口にする。練習内容に大きな変化があった。
「前はサンドバッグを一切打たなかったけど、今は毎日。足を使いながら無駄のない動きで打つ事を意識してます」
スタミナ強化などに有効なサンドバッグ打ちは、自分と向き合い、どれだけ追い込めるかが大切になる。正直、対人練習であるミット打ちの方がモチベーションも上がりやすいものだ。
木村は前所属の青木ジムで有吉将之会長とのマンツーマン指導や、ミット打ちなどでスタミナ強化を補っていた。
しかし、現役時は5度目の挑戦で世界王者になった苦労人で、現所属先の花形進会長の言葉で自分と向き合う決意が出来た。
「ボクシングはスタミナとハートの勝負。弱気になったら負け。スタミナがあれば怖いものがない」
会長の言葉はいわゆる「昭和の根性スタイル」だが、4回戦ボクサーからの叩き上げで世界王者になった木村の心には響いた。
スタミナ強化のために強弱をつけながらサンドバッグを打ち込んでいる
サンドバッグを叩き、自分と向き合う。自然とパンチの音は鋭くなり、質の向上を実感できているという。
32歳とベテランの木村が、新しい練習に挑戦するのはボクシング人生のゴールとして高い目標を設定しているからだ。
「最終的には井岡くんとやりたい願望がある」
昨年末の大一番。井岡一翔と田中恒成の決戦で、圧倒的な勝利を見せた同じ年の王者に胸を熱くした。
「(これから)戦うのは意識するし(スタイルは)絶対噛み合う。僕にとってのラスボスは彼です」
現在取り組むスタミナ強化が実を結び、手数で上回れば、巧みな技術で4階級制覇している王者に対して有利に展開できる可能性は大いにありそうだ。
「まずはフライ級で王座に返り咲く。今年は世界奪還します」
同じ土俵に立つためモチベーションは高い。最終章に突入したボクサーライフを悔いなく突き進む。
木村翔(きむら・しょう)
埼玉県熊谷市出身、32歳、花形ボクシングジム所属、第17代WBO世界フライ級王者。戦績は24戦19勝(12KO)3敗2分。中国の英雄ボクサー鄒市明を相手にTKO勝利した際、勇敢な試合姿勢と終了直後に相手をたたえたことで中国国内でも熱烈な支持を集めている。
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