日本の五輪ボクシング史上、入江聖奈(フェザー級)の金メダルに続き、女子で2人目となるメダル獲得となった並木月海(フライ級)。
彼女は女子ボクシング界のエースと言われ続け、東京五輪におけるメダル獲得の最右翼とされていた。
その理由は井上尚弥にも例えられるような、男子選手に引けをとらないパンチ力にある。
2020年2月に取材した当時の練習でも持ち前のパワーを発揮し、スパーリングで男子選手を下がらせていた。並木の身長は153cm。フライ級では小柄だが、踏み込みが速いため一瞬で間合いをつめることができる。
幼少期に同い年のキックボクシング世界王者・那須川天心と切磋琢磨した極真空手で鍛えた、「蹴り脚」が活きているのだろう。
「身長が低いのでフットワークを駆使しています。ステップを活かして相手のパンチを交わして自分のパンチを当てるのが私のスタイルです」
身長差によって生じるリーチの不利を鋭い踏み込みで補うだけではない。勢いをそのまま体に乗せてパンチを打てるため、威力が倍増するのだ。
モンスターとも呼ばれる世界3階級制覇・井上尚弥も、相手に悟らせない一瞬の踏み込みに体重を乗せて豪快なパンチで相手をKOしている。並木も同様の圧倒的なパンチ力で周囲の期待を集めてきた。
準決勝は惜敗だったが、前戦の準々決勝はリオ五輪銅メダリストを相手に5-0の判定で圧勝。接戦が多いアマチュアの世界大会でこれだけ圧倒的に勝てるのは驚くばかりだ。
五輪開幕前、並木は長年のライバル関係でもあった入江に言及し「(共に)他の種目ぐらいに有名にしていき、ボクシングを知ってもらうきっかけを作りたい」と熱く語っていた。
その言葉通り、女子二人の活躍で日本ボクシングが盛り上がっている。
並木月海(なみき・つきみ)
千葉県成田市出身、22歳、女子フライ級(52kg)、幼少期から空手とキックボクシングを始め、花咲徳栄高校でボクシングを始める。世界女子選手権で日本人女子史上2人目となる銅メダルを獲得。2019年には2年連続となるアマチュア部門最優秀選手賞を受賞。キックボクサーの那須川天心とは幼馴染で空手のライバルとして対戦経験もある。
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