取材中、フェザー級五輪代表・入江聖奈の語気が変わり、目に力が入った。
「そこで初めての挫折を味わいました」
丁寧な言葉遣いに、複雑な思いが入り混じった気がした。
思い返すのは16年のインターハイ。入江は当時1年生ながらフライ級の優勝候補だったが、2つ年上で現フライ級五輪代表・並木月海のプレッシャーに押されて0-3の判定負けを喫した。公式戦での敗戦は初めての経験だった。
「悔しくて、練習を全て見つめなおしました」。奮起した入江はその後全日本ジュニアを制しインターハイを2連覇。だが体の成長に伴い階級を変更したため、以降は並木と練習以外で戦うことはなかった。
今では同じ五輪内定選手として、合宿で練習や食事を共にする仲。
「並木さんは練習に取り組む姿勢が誰より真剣。常に私の一歩前を歩いている憧れの先輩です」と信頼を寄せている。
とは言え実戦練習になると、「リベンジしたい気持ちも残っているので」と、ついヒートアップしてしまうそう。
今は成績で並木さんに負けたくない――。
負けず嫌いな入江が掲げた目標は東京五輪での金メダル。新たな夢に向かって切磋琢磨している。
入江聖奈(いりえ・せな)
鳥取県米子市出身、20歳、女子フェザー級(57kg)、高校1年時に全日本選手権(ジュニア)フライ級で優勝。小学2年時にマンガ「がんばれ元気」を読んでボクシングを始める。
2018年の世界ユース選手権で銅メダル獲得、2019年の世界選手権ではベスト8。
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並木月海(なみき・つきみ)
千葉県成田市出身、21歳、女子フライ級(52kg)、幼少期から空手とキックボクシングを始め、花咲徳栄高校でボクシングを始める。
世界女子選手権で日本人女子史上2人目となる銅メダルを獲得。2019年には2年連続となるアマチュア部門最優秀選手賞を受賞。
【木村悠「チャンピオンの視点」】