ボクシング選手とは思えないような可憐なルックスから「激カワボクサー」として人気を集める千本瑞規。
そんな彼女のミットを受けるのは小口忠寛トレーナーだ。二人がコンビを組み始めたのはプロ転向した3年前のこと。
今でこそお互い全幅の信頼を置いているが、当初は意見が噛み合わないこともあったと小口トレーナーは言う。
「いわゆる“綺麗なボクシング”をしていて泥臭いことを嫌がっていました。『こんなのは私のボクシングじゃない!』と反発して、打ち合いを嫌がっていましたね」
しかし、打撃の正確性が判定のポイントを左右するアマチュアに対して、プロでは“相手へのダメージ”が勝敗に大いに影響する。別競技と捉えても良いくらいの差異がある。
小口トレーナーは根気強く千本にプロの戦い方を伝え続けた。
正統派ボクシングをしてきた千本にとって小口トレーナーの指導は新たなスタイルを見出すきっかけになった
「男子選手みたいに怒鳴れないので(笑)、話し合いを重ねました。プロで勝つためにはプライドをかなぐり捨ててでも競り合うことが大切なんです」
そんな情熱に感化され、千本も徐々にプロでの戦い方を覚えていった。
それまで足を使うアウトスタイルで戦っていた千本だが、接近戦にも対応できるファイタースタイルに変えた。
ミット打ちでも、快音を鳴らしファイターらしく手数で圧倒している。
「地獄のような追い込みもやったのでスタミナには自信があるね。(苦手としていた)ボディ打ちも上手くなって対応できるようになっています」
小口トレーナーが手ごたえを語れば、「小口さんのアドバイスで力強いパンチを打ち込む事を意識しています。だいぶ動きも良い方に変わってきました」と、千本も新たなスタイルへの自信を見せる。
次戦は5月23日、元世界王者の黒木優子と、東洋太平洋女子ミニマム級王座を懸けての一戦。勝てば世界への道も開ける。
信頼するトレーナーと二人三脚で世界を目指す。
千本瑞規(ちもと・みずき)
大阪府堺市出身、27歳、ワタナベボクシングジム所属、第3代日本女子ミニマム級王者。プロ戦績は2戦2勝(1KO)、アマチュア戦績は57戦45勝12敗。兄の影響でボクシングを始めた。高校生で世界ジュニアユース日本代表に選ばれ、大学進学後は2015年全日本選手権準優勝を果たした。
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