元WBOフライ級世界王者の木村翔が、虎視眈々と同級での世界王座奪還を狙っている。
2017年の世界初戴冠まで、独自に作り上げたファイトスタイルは「昭和のど根性ボクシング」。細かい被打を気にせず、前に出て打ち合う姿がファンの心をつかむ。
一方で、2018年に2階級制覇を目指して階級を下げ、大差の判定負けを喫した世界戦で課題を感じたという。
試合では王者のカニサレスに、足を使いながらのアウトボクシングを徹底され捉えることができなかった。
自分には何が足りないのか――。2020年1月、前所属先の休止を受けて花形ボクシングジムへ移籍したことが大きな転機となった。
「環境が変わってプラスになっています」
伸縮性のあるチューブ(ゴム)で腕を固定しシャドートレーニングを行う
木村章司トレーナーが参謀となり、出した答えは基本ともいえる「脇を開かないこと」。
脇が開いてしまうと重心がブレて、無駄な動きが増え、足を使う相手に打撃を与えづらくなる。さらにガードの姿勢も崩れてパンチをもらいやすい。
その反省からバランスを崩さないよう、チューブ(ゴム)で腕を固定しながらのシャドーを取り入れた。
強い選手は常に自分に足りないことは何か考え、実行に移せる人間だ。時に基本に立ち返り、それが身につくまで徹底する。
「攻めのスタイルは変えませんが、入り方や避け方を変えてよりいい攻撃に繋げていくのが課題です」
多くのファンの心をとらえるメンタルの強さに加え、技術の精度がさらに高まれば再び世界の舞台に立つ日も遠くない。
「まずはチャンピオンに返り咲き、今年は2戦はやりたい。いつ試合が決まってもいいように動いています」
万全の状態をキープしながら世界挑戦の機会を伺う。彼の今後の活躍に期待したい。
木村翔(きむら・しょう)
埼玉県熊谷市出身、32歳、花形ボクシングジム所属、第17代WBO世界フライ級王者。戦績は24戦19勝(12KO)3敗2分。中国の英雄ボクサー鄒市明を相手にTKO勝利した際、勇敢な試合姿勢と終了直後に相手をたたえたことで中国国内でも熱烈な支持を集めている。
【木村悠「チャンピオンの視点」】