ライト級での戦いに挑戦している三代大訓は、これまで12戦11勝(3KO)1分と無敗でキャリアを築いている。
パンチのバリエーションが少なくても、非常にコンパクトなワンツーで勝ち上がってきた。
彼のトレーニングを取材していると、特徴的なサンドバッグ打ちが目についた。
他の選手がサンドバッグが激しく揺れるような迫力ある連打をしているのに対し、三代は感触を確かめながら、淡々と打ち込んでいるのだ。
目を見張るのが右の打ち方だ。右利きの選手は右足を後ろに下げているため、左より距離が遠くなり、右の打撃は見切られやすい。
しかし、三代のパンチは左ジャブとほぼ同じタイミングで手が出ている。相手にとって初動がかなり見えづらいはずだ。
「淡々と打つ事を意識しているのでラッシュはあまりしません、だから僕の練習を見ている人は退屈だと思います」と三代は笑う。
サンドバッグ打ちは見た目以上に厳しい練習だ。体力強化や試合終盤のラッシュを想定したハードワークを念頭にしがちだが、さらに頭を使い独自の戦い方を身につけている。
三代の試合では相手が自分のペースを掴めず、独特の間合いに引き込まれ、コンパクトな打撃の餌食となる。そのテクニックはこのサンドバッグ打ちに隠されていた。
「最小限で動くのが一番強いんです」
機会を探り、冷静で着実に勝利をつかんでいく。現在世界ランキングもWBC、IBF共にタイトル挑戦圏内に入っている。世界の舞台に立つ日も近いだろう。
三代大訓(みしろ・ひろのり)
島根県松江市出身、26歳、ワタナベボクシングジム所属、第44代OPBF東洋太平洋スーパーフェザー級王者。戦績は12戦11勝(3KO)1分、2020年度ボクシング年間表彰で、顕著な活躍を見せた若手選手に贈られる、プロ部門「新鋭賞」を受賞。
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