11月8日にアウェイで行われたAFCチャンピオンズリーグ20203/24の浦項スティーラーズ戦後、小泉佳穂はショックを隠せなかった。
「すごく充実した内容だったし、選手一人ひとりが戦えていて、かなりの時間帯で勝ちに相応しい戦いができていただけに、めちゃくちゃ悔しい敗戦です」
小泉が振り返ったように、立ち上がりから浦和レッズは積極的に相手陣内でゲームを進め、ボールの奪い合いや回収でも上回っていく。試合が進むにつれて反撃も許したが、アレクサンダー ショルツに代わって先発した岩波拓也が落ち着いた対応でピンチの芽を摘んでいく。
その戦いぶりからは、4日前のYBCルヴァンカップ決勝で敗れた動揺は、微塵も感じられなかった。
日本から駆けつけた500人以上のファン・サポーターの後押しを受けた浦和レッズは36分、待望の先制点をゲットする。
その起点となったのは、小泉の自陣での切り返しとボールキープからの好フィードだった。そのボールにエカニット パンヤが追いつき、狙いすまして中央へパス。それをホセ カンテがトラップして左足で蹴り込んだのだ。
このとき、小泉は長い距離を走ってゴール前まで詰めていた。もし、カンテのシュートがGKに弾かれたとしても、押し込めていたに違いない。
この一連のプレーに、小泉の復活と充実ぶりが伺えた。
小泉が不振に喘いでいたのは、春先のことだった。
シーズン開幕からトップ下で起用されながらゴールを奪えないでいると、間近に迫ったACL2022決勝のプレッシャーも相まって、自分のプレーに迷いが生じてしまう。自身への失望や否定まで入ってしまい、一度はどん底まで落ちた。
その後、コンディション不良にも陥り、5月から6月にかけて約1カ月間の休養を余儀なくされたが、7月には「技術的なところと、精神的なバランスのところ。その両輪を同時並行で修正していかないといけない。だから時間はかかると思いますがやるべきことは、もう整理されています」と復調しつつあることを明かしていた。
現在は、9月2日のJ1リーグ第26節のアルビレックス新潟戦から公式戦15試合連続先発出場中で、自身の抱えた問題をかなり克服できているように見える。
この浦項戦へも、並々ならぬモチベーションで臨んでいた。
「ルヴァンカップ決勝に出た選手として、ここでどういうパフォーマンスができるかが、プロとして、浦和の選手として相応しいかどうかの分かれ目だと思っていました」
実際、それに相応しいプレーを披露していただけに、不可抗力のハンドによるPKで追いつかれ、明本考浩の退場によって数的不利となり、後半アディショナルタイムに逆転を許したことに、より一層悔しさが募ったようだ。
精神的に重い敗戦だったのは確かだろう。しかし、試合は待ってくれない。11月12日には埼玉スタジアムで首位・ヴィッセル神戸との大一番が控えている。
「これだけのファン・サポーターが韓国まで来てくれたのに、勝てなくて申し訳ないです。サポーターの皆さんも僕らと同じ気持ちだと思うので、この悔しさを次の神戸戦にぶつけたい。そこでのプレーをまた見てもらいたいと思います」
チームは過密日程を強いられ、疲労を抱えている選手も少なくない。そんな状況だからこそ、シーズン中に一時期チームから離脱し、周りの選手と比べると体力面で充実する自分がチームを引っ張っていくつもりだ。
(取材・文/飯尾篤史)
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