AFC U23アジアカップ2024での自身のパフォーマンスに手応えを掴んだに違いない。顔つきに精悍さが増し、自信が滲み出ているようだ。
そうした印象はあくまでも主観にすぎないが、本人の語る言葉は明らかに以前とは変わった――。
パリ2024オリンピックの出場権獲得に貢献し、5月4日深夜にカタールから帰国した大畑歩夢が、大原サッカー場で元気な姿を見せている。
サッカー選手にとってオリンピックはワールドカップへの登竜門であり、世界のサッカーマーケットで「ショーウィンドー」の役割を担う重要な国際舞台でもある。
しかも23歳以下という年齢制限があるため、オーバーエイジに指名されない限り人生において出場するチャンスはほぼ1度きり――。
それゆえ、“パリ五輪世代”の年長組である2001年生まれの大畑も、22年の浦和レッズ加入当初から「オリンピック出場が直近の最大の目標。そこから逆算して過ごしたい」と語り、バングーナガンデ佳史扶(FC東京)や加藤聖(横浜F・マリノス)といったポジションを争うライバルたちのパフォーマンスをかなり気にしていた。
昨シーズンは負傷で出遅れ、明本考浩と荻原拓也の後塵を拝してベンチ外の日々が続き、「このままじゃヤバい」と危機感をあらわにしていた。
迎えた今シーズン、「もう、あんな1年を過ごすのはいやなので」と体調管理に細心の注意を払い、開幕に向けて入念に準備してきた。
結果として渡邊凌磨に左サイドバックのポジションを譲ったが、第2節の東京ヴェルディ戦や第5節のアビスパ福岡戦で途中出場からゲームの流れを変える活躍を見せる。第6節のFC東京戦では先発出場のチャンスをもぎ取り、アジア最終予選を兼ねたU23アジアカップのメンバー入りを果たした。
「不安のほうが大きかったですね」
大会前の心境について、大畑はこう明かす。スタメンの機会が少なかったため、ゲーム体力に一抹の不安があったという。しかし、イラクとのトレーニングマッチでコンディションをしっかり調整し、UAE戦、カタール戦、イラク戦、ウズベキスタン戦で先発出場。走り負けるような場面はなく、デュエルでも相手を上回り、攻撃のビルドアップやチャンスメークでも見せ場を作ってみせた。
オリンピック出場という目標に一歩近づいたわけだが、以前と異なっていたのは、目標へのスタンスだ。
「オリンピックのことは1回忘れたほうがいいかなと思います。入れなかったときにあれなんで、あまり気にせずにやりたい。レッズで頑張った先についてくるものだと思うので」
2カ月ほど前まで「代表チームのスタッフにアピールしなきゃいけない」と焦りを覗かせていたが、今は目の前のことに集中するという考えに変わったようだ。
そして、その目の前のこと――レッズでのプレーに自信をもっていることも伝わってきた。
「いまは自信をもって自分のプレーが出せるかなと思っています。この勢いのまま、本当に数字が欲しいので、そこ(得点やアシスト)を取りたいなって」
大畑と同じ日に取材対応した渡邊も「試合を重ねるごとに成長が感じられて楽しい」と語っており、ペア マティアス ヘグモ監督は左サイドバックの人選について、頭をおおいに悩ますことになるだろう。
浦和レッズの左サイドバックをめぐるハイレベルなポジション争いから、目を離せそうもない。
(取材・文/飯尾篤史)
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