その突進力に、今季に懸ける意気込みが滲み出ていた。
明治安田J1リーグ第2節の東京ヴェルディ戦。0-1で迎えた終了間際、ペナルティエリア内でこぼれ球に素早く反応し、相手のファウルを誘ってPKを奪取する。
その直前にもゴール前に飛び込んでシュートを放ち、あわやゴールというシーンを作り出していた。ゲームの流れを引き寄せたのは、左サイドバックに入った大畑歩夢だった。
「勝たないといけない状況だったので、後ろ向きのプレーをなくして、しっかりと前へ、逆転できるように、と思っていました」
同じく途中出場したサンフレッチェ広島との開幕戦のあと、ペア マティアス ヘグモ監督が「歩夢は練習で非常に好調だった」と語っていたが、その好調さをしっかりキープしているようだ。東京V戦後には大畑自身も「練習から動けているなと感じていたので、出たら何か残せる自信がありました」と振り返った。
昨シーズン、途中出場で出場機会が回ってきても、なかなかアピールが叶わなかった。大畑のサイドバックとしての魅力はビルドアップ能力であり、推進力や突破力ではないため、「途中から出る難しさは感じていて、まだ整理できてないですね」と悩んでもいた。
しかし、この2試合を見ると、プレーの積極性が明らかに増していて、途中出場のコツも掴んだようだ。
こうした好調さの背景には、入念な体のケアがある。
これまで何度も負傷に泣かされているため、近年は肉体改造やスプリント改善に取り組んできた。昨年12月、FIFAクラブワールドカップを終えて帰国すると、年内は体を休めたが、年明けからすぐに体を動かしてきた。
沖縄でのトレーニングキャンプ中も、足に違和感を覚えると2月2日の名古屋グランパスとのトレーニングマッチを回避し、長引かせないようにケアをして、4日後のサガン鳥栖とのトレーニングマッチに出場した。
「もう、あんな1年を過ごすのは嫌なので」
トレーニングキャンプ中の体調不良と負傷によってポジション争いに出遅れ、モチベーションを下げてベンチ外が続いた昨シーズンの過ちを繰り返すまいと誓っているのだ。
22歳の大畑にとって、今年はオリンピックイヤーとなる重要なシーズンでもある。
浦和レッズでは渡邊凌磨と熾烈なポジション争いを繰り広げているが、U-23日本代表でもFC東京のバングーナガンデ佳史扶とのレギュラー争いが続いている。
「夏までにはポジションをとって(代表チームのスタッフに)アピールしなきゃいけないんで。簡単には(スタメンは)変わらないと思いますけど、次も出られたら、また結果を残せるように頑張ります」
練習での動きの良さは、マティアス監督もはっきりと認識している。今季に懸ける気持ちをプレーに乗せて、アピールを続けるのみだ。
(取材・文/飯尾篤史)
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