「大久保(智明)と関根(貴大)が好調なときと、彼らがいないときでは違いがある」
11月4日のYBCルヴァンカップ決勝のあと、マチェイ スコルジャ監督は、頼みのアタッカーふたりが万全の状態ではなかったことに、無念さを滲ませた。
その言葉に、大久保智明は複雑な思いを抱かずにはいられなかった。
「監督のコメント自体は嬉しいものでしたが、だからこそ、時間限定になってしまったことが心苦しかったです。それに、一緒に出場を目指していたタカくん(関根)は結局、間に合わなかった。その中で僕が選ばれたことに責任をより感じていたんですが……」
大久保が左太ももの肉離れを発症したのは、9月2日のJ1リーグ第26節のアルビレックス新潟戦だった。
懸命のリハビリの末、10月15日の横浜F・マリノスとのYBCルヴァンカップ準決勝第2戦に途中出場して実戦復帰。10月20日のJ1第30節の柏レイソル戦ではスタメン起用され、10月24日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2023/24の浦項スティーラーズ戦では59分から途中出場を果たした。
ところが、この試合で左足の別の箇所に違和感が生じてしまう。
「後半途中から出てワンプレー目でちょっと痛みが出たんです。ただ、それ以上酷くはならなかったので、そこまで重いものではないだろうと。状態としては筋肉の収縮の可動域が狭くなってしまって、感覚的にズレがあるという感じでした」
大事をとって10月28日のJ1第31節 鹿島アントラーズ戦での出場を回避。ルヴァンカップ決勝に照準を合わせてコンディションを調整してきた。
「自分の中では、やらなきゃいけないテーマが3つありました。ひとつはスプリントできるかどうかの確認。ふたつ目は試合での強度は問題ないか。3つ目が局面を打開するときのクオリティ。3つ目はそんなに心配していなかったんですけど、試合の強度に筋肉が耐えられるのかどうかを入念に確認しながら調整してきました」
筋肉が固まらないように入念にほぐし、疲労を取り除くことに集中した。「なんとか監督の選択肢に入りたい。選ぶのは監督だけど、その土俵には立っていたい」という一念で別メニューをこなした結果、ルヴァンカップ決勝直前に全体練習に合流し、当日のベンチ入りを果たす。2点を追う状況で後半開始からの投入となったのは、マチェイ監督から頼りにされている証だろう。
だからこそ、大久保は複雑な思いを抱えている。
「決勝に出場できたことに関しては、メディカルスタッフに感謝しています。ただ、フル出場できない状態では、監督にとって良くない悩みだと思うので、もう一度しっかり戦力になれるように。監督のコマになれるようにしたいと思います」
リーグ戦は残り3試合。ACLのグループステージは残り2試合。さらにはFIFAクラブワールドカップも控えている。決して無理することなく、しかし、シーズン中に大久保が再び躍動する姿が見られることを期待したい。
(取材・文/飯尾篤史)
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