首位の横浜F・マリノスに1-4というショッキングな敗戦を喫した約30分後、日産スタジアムのミックスゾーンに浦和レッズの選手たちが姿を現した。
みな一様に重い雰囲気を漂わせており、それぞれがこの敗戦を重く受け止めているのが伝わってくる。
2022年シーズンの公式戦も、ホーム最終戦となるアビスパ福岡戦を残すのみ。気持ちを切り替えて最終節に臨んでほしいが、一方で、横浜FM戦で感じた悔しさと彼我の差を胸にしっかりと刻み込んでもらいたい男たちがいる。
大卒2年目の伊藤敦樹と大久保智明――言うまでもなく、これからのレッズを背負っていくふたりだ。
この試合を振り返った彼らが共通して指摘したのは、「個」の部分の差だった。
「相手のほうが1歩目が早かったですし、個の局面でも相手のほうが上回っている回数が多かった。球際でも勢いがありましたし、そうしたちょっとした差がこのような結果に表れているのかなと思います」
伊藤がそう振り返れば、大久保もこう話した。
「最後のところの質が高いですし、切り替えの速さや球際の強度もある。全員が流動的にやっていて、流れがすごく速いなと思いました」
もちろん、スタイルや戦術については、アンジェ ポステコグルー前監督時代からの継続性を持つ横浜FMに一日の長がある。
だが、戦術うんぬんの前に、「止める・蹴る」の技術はもちろん、トランジションの速さや球際でのバトルなど、原理原則の部分において甘さがあった――そここそリカルド ロドリゲス体制の弱点であったような気がしてならない。
おそらく伊藤も大久保も、近い未来の日本代表選出を目指しているだろうし、ヨーロッパでプレーしたいという夢も抱いていることだろう。
だからこそ、この日対戦した横浜FMにはカタールW杯に出場する日本代表選手はいない、という事実に目を向けてほしい。つまり、目指さなければならないレベルはより高く、はるか上を行っているのだ。
馬渡和彰はかつて所属した川崎フロンターレの雰囲気について、こんなふうに話していた。
「川崎だとイージーなミスをすると目立つ。『そんなこともできないの?』という感じで、置いていかれる雰囲気がある。強いチームはミスに対して厳しい雰囲気がある」
これは技術の話だが、要は全員が日々のトレーニングで自分自身とどれだけ向き合い、突き詰めているか。それが試合に必ず出るものなのだ。
横浜FMの選手たちとの差はどこにあり、なぜ、差があるのかを考える。それが整理できたら、毎日コツコツ取り組んでいくしかない。ふたりにはレッズの雰囲気をガラリと変えるくらいのテンションでトレーニングに臨んでもらいたい。
伊藤と大久保にとってリカルド ロドリゲス監督は、プロになって初めて指導を受けた監督で、多くのチャンスを与えてくれた恩師だろう。その監督が志半ばでチームを去る姿を忘れてはいけない。
これからプロの世界でキャリアを積み上げていけば、多くの監督やチームメイトとの別れを経験することになるはずだ。だからこそ、後悔のないよう毎日全力で取り組む――成長とは、その先にあるものだ。
(取材・文/飯尾篤史)
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