興奮、感動、歓喜。思い出深い7月になった。
8月のある日、浦和レッズのアレクサンダー ショルツは、試合後の取材エリアでうれしそうな笑みを浮かべて話し始めた。
「見ましたか、見ましたか、ヨナス ヴィゲンゴーはグレイトなサイクリストだったでしょ?」
7月1日から23日までの日程で開催されていた、世界最高峰の自転車ロードレース『ツール・ド・フランス』の話である。
ショルツは全21ステージを争われるレースを欠かさず、テレビで観戦していたという。画面の前からなかなか離れることができなかったようだ。
「午前中にはレッズのトレーニングがあるので、支障をきたさないように見ていましたよ。もちろん、スタートからね(笑)」
過去の浦和レッズニュースでも紹介しているが、ショルツは幼少期から自転車レースを見てきた根っからのファンなのだ。
110回目を迎えた今大会、最も注目していたのは、前年度のチャンピオンである同じデンマーク出身のヴィンゲゴー。第6ステージで総合順位のトップに立ち、最終21ステージまでリーダージャージの『マイヨ・ジョーヌ』を着て走り続けた走りに感銘を受けたという。
「全日程を通し、ヴィゲンゴーは戦略的にステージレースを進めていたと思います。特に第16ステージのタイムトライアルを終えてからの走りは目を見張った。総合2位に就けていたタディ ポガチャル(スロベニア)をずっとけん制し、ライバルをうまく疲れさせていた。画面で見ているだけでも、とてもエキサイティングな戦いでした」
ショルツは同じプロアスリートとしても、ツール・ド・フランス2連覇を果たしたサイクリストを尊敬している。
フェアでスポーツマンシップにあふれるキャラクターに一目を置く。
「人間性も素晴らしいんです。物静かなタイプなので、実力に比べて、認知度は高くないかもしれないですが、デンマークだけでなくヨーロッパでも多くの人に知られた存在です。デンマーク人にとっては、誇りのような存在です」
ショルツは栄冠をつかんだデンマーク人に刺激を受けていたが、ケガのリスクを考えてロードバイクに乗ることは控えている。
「今、私は1台、自転車を持っていますから。『ママチャリ』ですけどね」としっかり日本語でオチをつけて、チームバスに乗り込んで行った。
もしかすると、気候のいい日は浦和の街をママチャリで走っているかもしれない。
(取材・文/杉園昌之)
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