Jリーグ30周年企画としてスタートした「マイヒーロー」連載の第13回は、物心ついた頃からレッズサポーターだったと公言する髙橋利樹に話を聞いた。
幼い頃によく見たJリーガーとして、すぐに頭に浮かぶのは、浦和レッズで大きな功績を残したブラジル人ストライカー。爆発的なスピードを生かしてゴールを量産したエメルソンも記憶に残るが、最も印象深いのはパワフルな点取り屋だ。
力強いヘディングシュートは、今でもはっきりと覚えている。レッズのJ1リーグ初優勝、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)初制覇に大きく貢献した、あの大きな男である。
「昔、僕が憧れたのはワシントン。ちょうど小学生の頃でした。好きになった理由は単純。ゴールをたくさん取っていたから。いつもレッズを勝たせていました。子どもながらに将来、ワシントンのような選手になりたいな、と思っていました。
当時、僕のポジションはボランチだったんですけどね(笑)。しかも、パワー系というよりも、テクニック系の選手でした。小さい頃って、自分のポジションに関係なく、選手のことを好きになったりしますよね」
今季、ロアッソ熊本からレッズに完全移籍で加入し、幼少期に見ていたレジェンドの偉大さを実感した。クラブハウスに飾られたタイトル獲得時に撮られた写真の前では、思わず立ち止まってしまったという。
「懐かしさを感じると同時にワシントンの功績をあらためて感じました。レッズでコンスタントに試合に出て、ずっと点を取っていたんですから。チームを勝たせる選手になることは簡単ではありません」
練習後にひと息つき、かつての記憶を辿っていると、お気に入りのFWがもうひとりいたことを思い出した。ワシントンが東京ヴェルディからレッズに加入する直前の話である。
「レッズのトミスラフ マリッチが好きでした。少年時代の僕が好きになる理由はひとつ。点を取っていたから(笑)。活躍した期間は短かったですが、いまだに忘れられなくて。天皇杯決勝の清水エスパルス戦で決めたゴールは最高でしたね。僕は国立競技場の現地で見ていましたから。
あれだけ活躍したのにチームからいなくなると聞いたときは、驚きました。『レッズは大丈夫かな』と思っていると、翌シーズン、代わりに来たのがワシントン。それで期待にしっかり応える活躍をするんですから、すごいです。そんなストーリーもあって、余計に好きになったのかもしれません」
点を取ることで認められるのがストライカー。結果をより求められるレッズの一員となり、ひしひしと感じている。
同じポジションには絶好調のホセ カンテに加え、実績のある興梠慎三も控えている。出場機会をつかむのは容易ではないが、虎視眈々と機会を窺っている。
「自分の立場上、与えられたチャンスで結果を残さないといけない。そうしないと、次はありません。いつ、そのときが来るのか分からないですが、頑張ります」
9月はリーグ戦、YBCルヴァンカップ、ACLと過密日程。どこかでピッチに立つ機会はきっとあるはず。近いうちにワシントンのように豪快なヘッドでゴールネットを揺らすつもりだ。
(取材・文/杉園昌之)
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