8月22日以降、カーリーヘアのセンターバックが先発出場した浦和レッズの試合は、すべて無失点で終わっている。
AFCチャンピオンズリーグ2023/24プレーオフの理文(香港)戦(3-0)に始まり、J1リーグ第25節の湘南ベルマーレ戦(1-0)、そしてYBCルヴァンカップ準々決勝の第1戦(1-0)、第2戦(3-0)。ホーム・アンド・アウェーともにガンバ大阪の攻撃陣を封じ込め、4試合連続でクリーンシートを達成した。
堅陣を支える岩波拓也は、喜びよりも強い覚悟を口にした。
「僕ひとりで守っているわけではないですが、無失点に抑えているのは、自分の中で大きなこと。今の僕はピッチに立ったときに、こういう試合を続けていくしかない。目に見える結果を残していかないと、先の道は見えてこないので」
湘南戦では激しいタイトなマークで相手FWを封じ込め、ルヴァンカップのG大阪戦では2試合を通じて、冷静な守備でピンチを何度も救った。
目を引いたのは、体を張ったシュートブロック。人並み外れて反射神経に優れているわけではなければ、勘でもない。J1リーグで通算248試合に出場するプロとして、シュートを防ぐ仕事にこだわりを持っているのだ。
「いくつかのセオリーを持ちながらブロックしています。シューターをうまく誘導している感じですね。タイミングも大事。場数を踏んで、やっと自分のなかでコツをつかんできました」
ルヴァンカップ準々決勝の第2戦でも、匠の技が光った。61分、G大阪の得点源であるイッサム ジェバリのミドルシュートを冷静にはね返す。前を向かれたが、慌てることなく対応した。
「GKと連係しながら、打たせたくないコースだけをシャットアウトしました。GKの泣き所を消すことですね。シューターはいつもGKの逆を突きたいと思っていますから。そのまま蹴ってくれば、僕の体に当たるし、もしも避けて打っても、GKが対処してくれます」
不用意にボールにアタックしても、かわされれば、元も子もない。重要なのは周囲とのコンビネーションだという。
「ひとりで守っているわけではない」という言葉は、ただの謙遜ではなかった。
「飛び込んでかわされるのは最悪のパターンですが、ガンバとの第1戦ではあえてそうした場面がありました。ボランチの柴戸(海)がカバーに来ていたので、僕が前に行くことで、すぐ後ろの柴戸にボールを奪ってもらいました」
個人で奪い切るだけが守備ではないのだ。背中にも目がある職人の岩波は、前を見ながら常に後ろも見ている。
(取材・文/杉園昌之)
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