きっかけは浦和レッズでの在籍年数の長い先輩からのひと言だった。
「関根(貴大)選手から『美味しいよ』って紹介されて行ってみたんです。そうしたら実際、美味しかったので、けっこう通ってますね」
そのお店はさいたま市内にある定食屋さんで、浦和レッズの面々も行きつけにしているため、店内には選手のサイン入り色紙がずらりと飾られている。
「お気に入りのメニューは生姜焼き定食ですね。栄養とか、体のことを考えて生姜焼きを選んでみたんですけど、美味しかったので、ずっと頼んでいます。夜の試合の時期は、昼に必ず寄って食べていました」
アスリートにとって豚の生姜焼きは、試合前後におすすめのメニューだ。
豚肉はビタミンB1が豊富で、玉ねぎはビタミンB1の吸収をよくするアソシンを含んでいる。ビタミンB1は糖質エネルギーに変えるため、疲労回復に役立つというわけだ。たっぷりの生姜も元気な体へと導いてくれる。
生姜焼き定食は、大畑歩夢にとっていわば勝負メシといったところだろうか。
一緒に食事に出かけるメンバーは、鈴木彩艶や工藤孝太といった若手が多いが、先輩である明本考浩とふたりで食べに行くこともあるのだという。
「夜に彩艶と食べに行って、翌日昼にアキくんと行ったこともあります。ACL(AFCチャンピオンズリーグ2022ノックアウトステージ)は中2日の試合間隔だったので、食べに行き過ぎちゃって、最後のほうはちょっと飽きたというか(苦笑)。それくらい通っていました」
サッカー選手の中にはポジションを争う相手であってもピッチを離れれば仲が良いというタイプもいるが、大畑自身はライバルの存在を気にするタイプだという。
だとすれば、明本は左サイドバックのポジションを争うライバルではないか。
「アキくんはFWやサイドハーフでも出場するから、左サイドバックでバチバチのライバルというわけではないので。一緒にご飯を食べに行ってサッカーの話をしたりします。『あのとき、どうすればよかったですかね』ってサイドバックでのプレーについて聞いたりしています」
そう言うと、大畑は3歳上の先輩のことをこんなふうに語った。
「話しやすいというか、友達のような感覚で接しています(笑)」
話を定食屋に戻せば、伊藤敦樹もこのお店の生姜焼き定食が好物なのだそう。今の季節はデイゲームだから昼にがっつり食べるわけにはいかないだろうから、試合前日の夜は生姜焼き定食を食べて、勝負に備えているのかもしれない。
(取材・文/飯尾篤史)
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