「GKとして相手にCKを与えたときは、まず試合の流れを見ます。ピンチというよりは、DFをはじめとするチームメートと、状況の確認ができる大事な時間にもなりますからね。今は押し込まれているから、ここは踏ん張りどころだ。今は流れが自分たちに来ているから、ここをしのげば攻めることができる。少ない時間ですけど、DFとそうした確認ができる貴重な時間でもあるんです」
“CKにおけるGKの守備”について掘り下げようと、質問をぶつけたが、逆転の発想とでもいうかのように、西川は時間の有効活用と状況把握から説明してくれた。そこには、GKとしてのCKにおける心構えのようなものが感じられた。
「相手がCKを蹴りにいくときはプレーが途切れて、時間ができるので、そのときにチームメート一人ひとりの顔や表情を見ることも大事なんです。選手個々のメンタルは、一人ひとり違います。
「当たり前のことですけど、情報を得るためには、まず観察しなければならないですよね。ただ、たくさん見ることも大切ですけど、見過ぎると余計な情報を入れすぎてしまうことにもつながるので、見るべきポイントを自分のなかで整理して、押さえておくことも大事だと思います。
「相手のターゲットとなる選手がどこにいるのか。他には、例えばですけど、自分の前に1人、2人立っていれば、1人はニア逸らしというか、ニアでボールを触って逸らしてくる選手もいるので、相手が何を狙っているのかを、短い時間で判断しながら、予測して、チーム全体に声を掛けるようにしています。
「うちはゾーンディフェンスなので、基本的には僕が担当するエリアと、DFが担当するエリアの目安を決めています。僕のエリアにボールが来れば僕が、それ以外のところにボールが来ればDFに任せて対応してもらうようにしています」
「(J1第25節の)徳島ヴォルティス戦は風も強かったので、自分が飛び出さず、確実性を優先しました。ウォーミングアップの時点で、風の強さは確認していて、アウトスイングのボールがかなりゴールから離れていく状況だったので、DFに任せるようにしようという考えがありました」
「いろいろなクロスボールを、たくさん蹴ってもらうことが大事かなと思います。ストレート、アウトスイング、インスイング、それぞれに違いや特徴があるので、いろいろなボールを蹴ってもらい自分でキャッチすることももちろん、どんな球がどういった軌道を描くのかを知っておくことも大事かなと。クロスボールの対応に関しては感覚をつかむことも大切だと思っているので、僕は今も、たくさん蹴ってもらっているんです」
「それによって、自分がどこまでいけるのかが分かるようになりますからね。また、中が1枚や2枚、もしくは3枚と、枚数によって自分自身のポジショニングも変わってくるはずです。状況に応じた自分の身体の向きというのも大事になってきますし、そこには相手との駆け引きも出てきます。
「GKだからといって守る練習をするだけではなく、ときにはCKを蹴るキッカーの立場になってみるのもいいかもしれません。チームメートに手伝ってもらって、CKを蹴る位置に自分が立ってみたときに、どこに相手がいたら、ここにボールを蹴りにくいとか、こうした状況だとキッカーは狙いやすいという、相手からの視点を把握しておくことも活きると思います」
西川周作CKに向けた準備集
(取材/文・原田大輔)