永井龍にインタビューしている途中、賑やかな声が聞こえてきた。
「LINE NEWSに出るんじゃないの?」
柏好文が笑顔で近づき、永井を冷やかした。LINE NEWSで自分のことを書かれた文章が気に入っているのか、何かというと柏好文はその時の表現を使ってくる
特に柏のお気に入りは「○○のような青空」というフレーズだ(3月31日取材)
永井、心からの笑顔。ここ最近、ほとんど見たことのない満面の笑み。永井自身の心が前向きでなければ、こういう表情にはなれない。
昨年秋に負った左足首のケガが今も永井を苦しめる。今季のキャンプではJ2相手の練習試合で6試合5得点とゴールを量産したが、開幕前にまたも離脱。そして未だ、全体練習に合流できない。
「痛みをごまかしながら、キャンプでも結果を出していました。でも」
痛みのために、100%で走れない。
「ほんまやったら、あのパスにも届くのに」「もっとダッシュできるのに」
そんな葛藤に苦しみ続け、開幕直前に「無理や」と判断した。
「自分は120%の力を出し切って攻守に貢献するタイプ。100%の状態でプレーできないのに、点をとれるはずがない」
どんな時も全力で戦ってきた熱血漢にとって、全力を出し切れない状態はやりきれなかった(3月31日取材)
徹底的に治療に専念し、足首に負担をかけない日々が続く。その間、ジュニオール・サントスや鮎川峻、浅野雄也らがゴールを記録し、チームも勝点を重ねた。
焦りはゼロではない。だが、永井は「自分にベクトルを向けてやるしかない」と気持ちを落ち着けた。
その我慢の甲斐もあり、今は「90%の状態」(永井)まで戻ってきた。
100%に近い力でスプリントを繰り返し、先週からはボール回しのトレーニングにも参加できるようになった。
「今は17連戦の最中。必ず、自分の存在が必要になる。そのためにもしっかりと治して、自信を持って戻りたい」
復帰に向けての光が見えてきたことによって、言葉にも自信が見えてくるようにもなった(3月31日取材)
柏が彼を冷やかした言葉を再掲しよう。
「永井は虎視眈々と復帰を狙っている」
そういう状況になりつつあることが、本当に嬉しい。
永井龍(ながい・りょう)
1991年5月23日生まれ。兵庫県出身。FW。C大阪の育成組織で育ち、年代別代表の常連。2010年、C大阪のトップチームに昇格。2015年の天皇杯1回戦対FC大阪戦で相手選手と接触し、腎臓を損傷。一時は生死をさまよう状況にも陥った。2016年、復活を期した長崎でのプレーでJ2とはいえ17得点をゲット。その後、名古屋・松本と移籍を繰り返し、昨年から広島でプレー。好きな映画は「トイ・ストーリー」。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】