「プレーできること、それ自体が幸せなことですよ」
ケガから戻ってきたキャプテン・佐々木翔の笑顔が、とにかく嬉しかった。
佐々木も、そして永井龍(後者)も、負傷でチームを離れていた2人がトレーニングに参加できていることが嬉しい(4月23日撮影)
3月22日〜30日まで行われた日本代表合宿中に左足を負傷し、試合に復帰したのは4月21日のルヴァンカップ対仙台戦。
久しぶりの試合出場の後、佐々木はチームへの想いを言葉にした(4月23日撮影)
彼が戦列を離れている間、広島は苦戦が続いた。5試合で1勝2分3敗。4月10日の湘南戦に敗れて以降は勝利がない。苦境を外から見ざるを得なかったキャプテンは、何を感じていたか。
「結果だけでなく内容も求めないといけない」という佐々木の言葉は重い(4月23日撮影)
「もちろん、勝利はとても大切。ただ、連戦の中でチームが何を発揮して結果を出していくか。そこはとても重要。勝てばいいというものでもない」
こういう苦しい時は、とにかく結果を求めようと安易な方向に流れがちになる。だが、その場しのぎの闘いは長く続かない。佐々木の経験が、勝負の世界にありがちな傾向を教えてくれる。
コミュニケーションの大切さを佐々木は説く(4月23日撮影)
特に彼が大切だと指摘しているのは、選手間の会話だ。ピッチ上でもオフ・ザ・ピッチでも、言葉をかわしあう重要性をキャプテンは語る。
「みんな、必死で闘っているしハードワークしている。だからこそ、もっともっとお互いが要求しないと。ポジショニングやボールを持った時の攻め方とか、そういう会話がどこまであるのか。そこは(チームを離れている間に)思いましたね。みんなの必死さを結果に繋げるために、もっと密な連携は間違いなく必要」
4月25日、対福岡戦。リーグ戦の先発に戻った佐々木翔は相手にオウンゴールを与えてしまい、結果も敗戦。課題のコミュニケーションも改善されたようには見えず、思惑どおりにはいかない現実を痛感した。
それでも悔しさに悄然とするチームの先頭に立ち、主将はサポーターに頭を下げた。「申し訳ない。でも次を見てほしい」。佐々木翔の厳しい視線が、そんな決意を表現していた。
佐々木翔(ささき・しょう)
1989年10月2日生まれ。神奈川県出身。サッカー選手であったイギリス人の父と日本人の母の間で生まれた。ただ、彼が生まれてすぐに両親は離婚。母の故郷である神奈川県で育ち、横浜FMの育成組織でサッカーを学んだ。家庭の経済事情を考え、高校卒業後は自動車専門学校に入って手に職をつけようと決意。だが母の「お金は大丈夫だから大学に行きなさい」という言葉に後押しされ、神奈川大へ。卒業後は甲府を経て、2015年から広島に加入。チャンピオンシップ第1戦、90分に同点ゴールを決めるなど優勝に貢献。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】