青空の下、ボールを打ち合う二人の選手。フォアハンドも両手打ちで、身体に巻き付くようにラケットを振る姿が、似ていると思わないだろうか?
白いシャツの選手は、今年18歳を迎えたばかりの今村咲。ジュニアで経験を積み、来季からプロとしての本格始動を期している。
そして黒いシャツが彼女のコーチの、中村藍子。2007年に世界ランク47位まで至った、元トッププレーヤーだ。
夫の古賀公仁男コーチと共に、中村が兵庫県内にアカデミー立ち上げの準備を始めたのが今年2月。
その時、練習生候補として真っ先に中村の頭に浮かんだのが、ジュニア大会で幾度か見た今村だった。その最大の理由は、「プレーが私と似ている」こと。2012年の引退以降、「自分の経験をテニス界に還元したい」と常々願っていた中村にとって、若い今村は情熱を注ぎ込む器として最適だった。
その中村に声を掛けられた時、今村は驚き、そして喜んだ。何しろ中村は今村にとって、尊敬し目指す存在だったから。
「小学生の時に、藍子さんとボールを打たせてもらう機会があったんです。その時に、自分と打ち方が似ているし教え方も上手で、こんな方に教えてもらえたらな~って思ったんです」
新型コロナによるツアー中断により試合はできていないが、心技を基礎から作り直せたため、むしろ良かったと二人は声を揃える。
両手でしっかりラケットを握りしめ、新師弟の二人三脚の旅が始まる。
中村藍子(なかむら・あいこ)
1983年生まれ、大阪市出身。約10年ツアーを転戦した後、2012年、ケガもあり引退。二児の出産を経て、今年3月から念願のアカデミーをスタート。
今村咲(いまむら・さき)
2002年生まれ、京都府出身。左右とも両手から放つパワフルかつスケールの大きなテニスで、今年1月には全豪オープンジュニア出場。香港のアカデミーを拠点としていたが、中村たちに声を掛けられ帰国。アカデミーの近くで一人暮らしを始め、テニスに全身全霊で打ち込む。
【内田暁「それぞれのセンターコート」】