「カモン、エナ! カモン、シューコ!」
声を張り上げ、手を叩き、日本人ペアを応援する白人男性の姿がコートサイドにあった。
今年の全仏オープン女子ダブルスで、第4シードの肩書を得た青山修子(トップ写真左)/柴原瑛菜(トップ写真右)組。
その二人を応援するのは、同大会に参戦しているダブルス選手、ダリア・ユラクのコーチだった。
画面手前、手を叩き応援する男性がユラク選手のコーチ。最後まで熱心に声援を送り続けていた
なぜ青山と柴原を応援しているのか?
そう尋ねるとコーチ氏は、「あの二人は、ツアーで最もナイス・ガールズなんだ。僕らの友人のためにチケットを手配してくれたりするし」と即答し、こう続けた。
「それに、練習相手としても最高な二人だよ。常にまじめで相手を敬い、ポジティブな姿勢で練習にのぞむからね」
テニスの大会では基本的に、選手は練習相手を自分たちで探す。
選手数の多いグランドスラムともなれば、コートでの練習時間は限られる。だからこそ良い相手と充実した練習をすることは、パフォーマンスを左右する重要なカギにもなるのだ。
「私たちがよく一緒に練習する選手たちは、良い人たちが多いので、いい感じで試合に入れる。相手探しは大事だと思います」
柴原も練習相手探しの重要性を、そう定義した。それは換言すれば、自分たちが周りの選手にとって「良い練習相手」であれば、状況に応じて調整がしやすいということでもある。
1回戦で青山/柴原組は、ファイナルセット0-4とリードされ、しかも相手のゲームポイントの窮状から、驚異の逆転劇を演じた。
試合を決めた瞬間。「負けを覚悟した」(青山)窮状からの大逆転勝利だった
「負けも覚悟していたけれど、二人で声をかけあい、チャンスが来るのを待ってついていこうと確認しあいました」と青山。
ツアー仲間からも敬意を集める二人は、観客のみならず関係者たちの声援も得ながら、一歩ずつ上を目指す。
青山修子(あおやま・しゅうこ)
1987年12月19日、東京都町田市生まれ。早稲田大学卒業後にプロ転向。主にダブルスで活躍し、2013年ウインブルドンベスト4、ツアー優勝は9回を誇る。
ペア結成1年でグランドスラム8強の急成長
柴原瑛菜(しばはら・えな)
1998年2月12日米国カリフォルニア州生まれ。二人の兄と共にテニスを始め、8歳の頃にはUSTA(USテニス協会)の支援を受けるまでに頭角を現す。2016年全米Jr.ダブルス優勝。2019年夏より日本国籍の下でツアーを転戦。
マクラクラン勉とのペアも好相性
※トップ写真は2021年2月全豪OPにて撮影
【内田暁「それぞれのセンターコート」】