2020年のボクシングは、新型コロナウイルスの影響で試合の延期や中止が相次いだものの、歴史に残る好ファイトも数多くありました。
フォロワーの皆さんにご協力いただいたアンケート結果をもとに、2020年の一番印象に残った選手、試合をランキング形式でご紹介いたします。
同率第3位 中谷潤人、世界王者に
「中谷潤人選手の世界王座奪取戦。インファイトなのに最小限の動きで闘牛士のように相手をいなす姿が衝撃的でした」
「コロナ禍、国内開催唯一の試合で令和初の新規世界チャンピオン誕生」
コロナの影響で世界戦が何度も延期したにもかかわらず、11月、見事な8RKOでジーメル・マグラモとの決定戦を制し、初戴冠となるWBO世界フライ級王座に就きました。終始自分のペースで試合を進め、堂々KOでの王座奪取は実力がある証拠。長期防衛も予感させる一戦でした。
彼に何度か取材する機会もありましたが、深追いせず緻密で冷静な組み立てをしてくるファイトスタイルのイメージと同様、リングを離れても非常に穏やかで知的な青年です。
その一方、中卒後進学せず単身渡米してボクシングを学ぶなど、競技にかける覚悟と情熱は鬼気迫るものがあります。来年は王者として勝利を積み重ねていくことに期待しましょう。
同率第3位 堤聖也VS比嘉大吾
「親友の比嘉大吾選手との闘い。ドロー判定だったが、下馬評を覆す好ファイト。試合に挑むドラマもあって入り込めた」
「堤選手のがんばり、試合で見せたスタミナから、練習量を想像すると、私も頑張ろうと元気が出た」
親友同士である堤聖也と比嘉大吾が熱戦の末、ドローとなった試合も多くのファンを魅了しました。堤はまだプロでの試合経験は少ない中、元世界王者の比嘉と互角の戦いを見せてくれました。私もミットで受けましたが、パンチ力もある選手なので来年はKO勝利量産に期待がかかります。
ライバルに善戦を許した比嘉は次が正念場。大みそかにWBOアジアパシフィックバンタム級王者・ストロング小林佑樹と対戦します。2階級制覇を達成するため、絶対に負けられない試合となります。
ドローとなった要因は階級を上げたばかりの比嘉がバンタム級の戦い方に適応できていなかったことも一つ。次の試合では強い比嘉が見られることに期待しています。
第2位 無観客のラスベガス。井上尚弥
「井上尚弥vsジェイソン・マロニー。井上選手の完成度の高さは感嘆の一言」
「ラスベガスでの試合。練習でやった事を本番で出せるハートの強さ。コロナ禍で多くの制約があったにもかかわらず強い挑戦者に圧勝した」
「10月31日の井上尚弥選手のラスベガスでの防衛戦。特に6R目のモロニー選手のジャブに合わせた左フックのカウンターは鳥肌が立ちました」
1年ぶりの試合で初のラスベガス戦となりましたが、挑戦者・ジェイソン・マロニーを圧倒して見事なKO勝利でインパクトを残しました。
この試合で目立ったのはさらなる井上尚弥の「モンスター」ぶりです。
特長であるパワーに加えてKO勝利につながる攻撃を繰り出せる絶妙なタイミングの取り方。さらに、「初のラスベガスで無観客」という状況で、自分のパフォーマンスを出せるメンタルの強さ。全て兼ね備えているからこそ彼はモンスターなのだと再確認しました。
今年は1試合だけでしたが、来年は日本人初の4団体統一王者に期待が集まります。
第1位 中谷正義、逆転KO勝利
「ラスベガスで期待以上の逆転TKO劇!精神的な成長が感じられ胸が熱くなりました」
「強いメンタルがあれば、日本人でも世界で戦えるんだと感動した」
「試合後のインタビューで、もう一度ロペスとやりたいって言葉に痺れた」
中谷は2019年の敗戦後に一度現役引退表明し、その後現役復帰。1年5ヶ月ぶりの試合で強敵のフェリックス・ベルデホを逆転KOで下し復帰を飾りました。
4Rまでに2度のダウンを奪われ、判定で勝利はない崖っぷちの状況で迎えた9Rの逆転KO勝利。絶対KOが必要な場面で相手を倒した気迫は多くのファンに勇気を与えました。
パンチをもらわないディフェンス力を上げていけば、世界屈指の激戦区であるライト級でも十分通用する可能性があります。31歳のさらなる進化に目が離せません。
その他にも、様々な回答があり、ファンの皆さんが様々な思いを持って観戦していることが伝わってきました。
まだまだ魅力的なボクサーがいますし、紹介しきれない熱戦もたくさんあります。2021年も選手の思いや試合の舞台裏を紹介していきます。どうぞご期待ください。
【木村悠「チャンピオンの視点」】