スギHD会長の杉浦広一氏(写真:時事通信)
《「西尾市民げんきプラザ」を建設したこの場所は、「スギ薬局」創業の地であります。昭和51年創業以来、私共は薬剤師として地域医療の担い手となり、地域社会に貢献したいという思いで社業に専念してまいりました(中略)平成29年3月吉日 杉浦広一 杉浦昭子》
愛知県西尾市にあるスポーツジムのエントランスには、施設の由来を説明するボードが掲げられていた。
杉浦広一会長(70)と昭子相談役(67)は、中部地方を中心にドラッグストア「スギ薬局」約1,400店舗を展開するスギホールディングス(以下スギHD)の創業者夫妻だ。
「スギHDの要望を受けて、西尾市が杉浦夫妻の新型コロナウイルスワクチン接種予約枠を優先確保するように便宜を図っていたことが発覚したのは5月11日のことです。
“杉浦夫妻は薬剤師なので医療従事者枠でできないか”といった強い要請が複数回あり、最終的には近藤芳英副市長が便宜を指示したのです。
スギHDはスポーツジムを西尾市に無償貸与するなどしており、夫妻は地元の超名士です。スギHDは“秘書の判断”と説明していますが、地位を利用した“厚顔ぶり”に市内でも怒りの声が上がっています」(地元紙記者)
ちなみに4月に米経済紙『フォーブス』が発表した「日本の富豪」によれば、杉浦広一会長の資産は約1,550億円!
この巨額資産形成は、西尾市内にあった“16坪の薬局”から始まったという。
創業当時を知る地元の女性によれば、「湿布薬を買うにしても、種類や値段の説明をきちんとしてくれるので助かりました」
また別の男性は、「愛想がいいだけではなく、サービスもしっかりしていました。買い物をするとスタンプを押してもらえて、たまるとフライパンやトースターなんかをもらえるのですが、そんなサービスは当時珍しかったですから、どんどんお客も増えていったのです」
夫婦2人だけでの経営にもかかわらず、営業時間は朝7時から夜11時まで。
「自宅からはよく夫婦げんかの怒鳴り声が響いてきました。特に奥さんがご主人をなじる声ですね。“こんなに働いたら死んじゃうよ!”とか“銀行の言いなりになって!”とか……」(自宅近所の住民)
■寄付をお願いしてもたったの100円…
創業当時の評判はけっして悪くはなかったのだが、バブル期にスギ薬局グループが成長を遂げていくなかで、批判的な声も増えていったようだ。
「とにかく気前はよくなかったです。お祭りだからと寄付をお願いしても、たった100円とか。だからお金持ちになったのでしょうけど……。
(広一氏の)母の代から住んでいる市内の一軒家に住民票を置いているようですが、ずいぶん前から別の場所で生活しているそうで、いまではまったく近所づきあいもなくなりました。
小さなお店1軒から、あれだけのチェーンを築いたのですから、それは自信もつくでしょう。特に奥さんのほうがやり手という印象で、講演をしたり、地域の催しに出たりと、どんどん人前にも出るようになったんです」(西尾市内に住む杉浦夫妻の知人)
昭子相談役は、「公益財団法人 杉浦記念財団」の理事長も務めているが、その設立時について雑誌のインタビューでこんなエピソードを明かしている。
《著名なO先生(※インタビューでは実名)に直接電話をして、財団を作りたいので、お会いしてお話を伺いたいとアポをとったの。今でも(※先生が)紹介してくださる方に挨拶代わりに言われるのは、『ある日突然、杉浦理事長と事務局長がやってきてね』と。直接のアポが余程あきれられたのでしょうね》
前出の地元紙記者はこう語る。
「インタビューで昭子相談役は、面白いエピソードとして披露したつもりなのでしょうが、“剛腕”か“自分勝手”かは相手の受け止め方次第です。
『自分たちが直接電話をして頼めば、多少の無理は通るだろう』という考え方は、今回のワクチン便宜問題にも通じるところがあると思います。
また昭子相談役は一昨年に自叙伝『一人のために、地域とともに』を執筆しています。あくまでも女性の視点にこだわるなど、成功の秘訣についてもつづっており、スギHDを通じて頒布しましたが、これも創業者だからこそ許されたのだと思います」
創業当時からの方針は“目の前のただ一人のお客さまを大事にする”だという。この方針を忘れなければ、“上級国民批判”もされなかったのではないだろうか。
「女性自身」2021年6月1日号 掲載