今シーズンはラミレス監督の集大成となるはずだったが、22年ぶりのリーグ制覇の望みは絶たれてしまった。4年前から優勝すると予想してきたものの、今年は投手陣に故障者が続出したことに加えて、佐野、梶谷、宮崎の3割打者を3人も擁しながら打線がかみ合わなかった。
得点は本塁打に頼らざるを得ない現状で、オースティン、ソト、ロペスと外国人選手が3人も打線に並び、細かい攻撃を繰り広げるのが難しい。2点差以内のゲームは16勝31敗。監督はデータを重視するあまり、各選手の好不調を判断できなかった部分もあるのではないか。
残りは17試合。おのずと興味は個人タイトルに向けられる。自身初のタイトルとなる首位打者を狙う佐野は4番という重責を背負いながら、シーズンを通して波がないことが素晴らしい。
特に初球からどの球種でもフルスイングできる感覚は、相当意識を高く持たないとできない。迷いなく集中力を研ぎ澄ませて打席に入らないと、体は反応しない。俺のレベルでは無理だったな。
今月の初めに打率が下がったのは、初球を見るようになったことが影響したのかもしれない。5試合連続アーチを放つなど本塁打は増えているが、佐野は元来ホームラン打者ではない。(通算278本塁打の)田代(チーフ打撃コーチ)のような打球に角度がつくタイプとは異なるので、あくまでもアベレージを大事にする4番でいてほしい。
2000年に金城(現巨人コーチ)が首位打者になったシーズン終盤はベンチもタイトル争いを念頭に入れて打席に立たせていたが、ここまで来たら佐野には全試合に出場した上で、タイトルをつかみ取ってほしい。
一方、その佐野を追う梶谷も素晴らしい1年を過ごしている。結婚し子どももできて、公私ともに充実したことが落ち着きをもたらしているのではないか。広角に打てるようになったことも大きい。首位打者争いのライバルがチームメートとはいえ、梶谷もチャンスがある限り、タイトルを狙ってもらいたい。
今季は新型コロナウイルスの影響で、ファンが横浜スタジアムになかなか足を運べなかった。巨人の優勝や順位が決まっても、選手は最後まで勝利を目指してプレーしてほしい。
たかぎ・よしかず
1971年にドラフト外で大洋(現横浜DeNA)に入団。プロ16年で957安打、102本塁打、463打点。87年に引退後、1軍の打撃コーチなどを歴任。98年には「マシンガン打線」の生みの親として、日本一に貢献した。愛川町出身。71歳。
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