「僕は地元にあるヴィスワ クラクフというチームのサポーターでした。そのチームがリーグ連覇を達成したことがあったんです。それはもう、信じられないような出来事でした。そのときの僕は、まだ指導者ではなく、ひとりのサポーターだったので、当時のチームで活躍していた選手や監督は、まさに憧れと言える存在でした」
「指導者としてのキャリアは、アカデミーのコーチからスタートしました。その後、ラクフ チェンストホヴァという小さなクラブで、アシスタントコーチを務めました。そこではコーチとして選手たちの指導にあたっていただけでなく、対戦相手の分析も担当していました」
「在籍していたクラブと契約せずに、フリーになったと聞いた。一緒に仕事をしたいと思っているから、ぜひ一度、会って話をしないか」
「それまでテレビなどでしか見ることがなかった人ですからね。その人から連絡をもらって、一緒に仕事をしないかと声を掛けてもらった。まさに信じられない出来事が起きたといった心境でした」
「だから、話をもらって決断するまで、それほど時間は必要なかった。ポーランドを飛び出し、日本で働くことにも不安はありませんでした。なぜなら、Jリーグはクオリティーの高いリーグだということも分かっていました。だから、マチェイさんと再び一緒に仕事がしたい。浦和レッズというクラブで自分も働きたいと、すぐに思いました」
「組織として本当に素晴らしいクラブだと感じました。全員が同じ方向を向き、同じ目標に向かって働いていることが、すぐに分かったからです。それは選手やスタッフだけでなく、クラブに携わるすべての人たちから感じたことでした。そういうクラブで働けることが光栄ですし、誇りを感じています」
「ホームのみならず、アウェイにも、こんなに多くのファン・サポーターが駆けつけてくれるのかと、その姿を見て本当に驚きました。彼らは試合中も、毎分、毎秒、選手たちを鼓舞し、サポートしてくれています。個人的には、ゴール裏にたくさんの旗がたなびいているあの光景がいつも好きなんですよね」
「もちろん、ボスであるマチェイさんを含めて、コーチ陣全員でディスカッションを繰り返していますが、主に僕がディフェンスを、ラファルコーチがオフェンスを担当しています。チームとして目指しているハイプレスやミドルゾーンでの守備、さらには自陣に引いたときの守り方、他には守から攻、攻から守への切り替えも含めて役割を担っています。細かいところを挙げればキリがないのですが、DFがシュートブロックするときの体の角度や体勢にいたるまで、選手たちに伝えています」
「我々の守備が強固なのは、ディフェンスラインを担っている選手たちのクオリティーが非常に高いことが理由として挙げられます。彼らが見せる試合や練習での努力には、本当に感謝しています。チームにいる全員がプロフェッショナルで、常に向上し、成長しようとしてくれています。だからこそ、チームは試合をするたびによくなっていっている。
「コーチのひとりとして、次の試合に勝ちたいという思いしかありません。本当に気の利いた言葉を言えずに申し訳ないのですが、目の前にある試合に、選手たちが全力で臨めるように、全力でサポートすることしか考えていません。だから、答えるならば、『すべての試合に勝ちたい』ということでしょうか」
(取材・文/原田大輔)