「学生コーチとして入部したんです。プロになりたいと思ってサッカーをやってきましたが、だんだん自分の実力が分かってくるじゃないですか。それで最初は大学でサッカーを続けるつもりはなくて、普通に勉強して興味のある分野で就職しようと。
「これからサッカーでは分析とか、テクニカルの分野が大事になってくるよ、と教えてもらって、そういう道もあるのかと。あのとき話を聞かせてもらわなければ、こういう仕事があることに気づいていなかったので、感謝しています」
「やるからにはプロになりたいじゃないですか。だから、僕は指導者としてプロを目指そうと思ったんです」
「B級、A級、S級の講習会を手伝いに行って、非常に勉強になりました。分析するうえでのスキルやサッカーを見るうえでの観点、整理の仕方を学べた。指導実践の現場を見られたのも大きかったし、インストラクターの方々が受講生にされるフィードバックの仕方もかなり参考になりました」
「先輩に対しても同級生に対しても、改善点の伝え方が難しかったですね。学生コーチとして僕は主にBチームやCチームの指導を担当していて、トップチームに昇格した選手がそこでも活躍する姿を見るのは嬉しかったです」
「僕が指揮をしていた最後の大会で、交代選手を見誤って負けたんです。その選手を呼んで、『行くぞ』と伝えたとき、違和感を覚えた。顔つきがおかしいなと。投入したら案の定、ダメだった。あとで聞いたら、コンディションが良くない理由が分かりました(苦笑)。自分の直感を信じられなくて、後悔しています」
「名古屋グランパスのスクールは年中から中学3年までクラスがあるんです。それぞれの年代でアプローチの仕方も変わりますし、小さい子であれば、いかにサッカーに興味を持って楽しませるかが大事。日々の練習メニューを先輩コーチと相談しながら構築していきました」
「もともとJクラブのトップチームの分析担当として働きたいと思っていて、その思いを捨てきれなかった。そこでトップチームの分析担当を必要としているチームを自分で探して。結果、安松先生を通じていろいろと繋がっていって、徳島ヴォルティスで働かせてもらうことになったんです」
「チョウさんには本当に感謝しています。1年目の僕を食事に連れて行ってくれて『大丈夫か』『仕事、大変じゃないか』と親身になって支えてくれたんです。あと、米田徹コーチ(現FC岐阜)や甲本偉嗣コーチにもお世話になりました。
「だから、重要な点がダイレクトで伝わるように、映像の順番にも気を使いながら、8分以内に収めようと努力していました。量と質の両輪を回していくのが大変で。でも、自分の分析結果をチームで共有して、そのプレーで崩せた、あの分析がハマったね、となったときはすごくやりがいを感じました」
「リカはとても気さくで、明るく接してくれるので、緊張していたのがバカバカしくなるくらいでした。僕はプロのトップチームで仕事をするようになって2年目じゃないですか。それなのにリカは『どう思った?』って、僕の話をちゃんと聞いてくれるんですよね。
「有利な立ち位置を取ることによって相手を動かすことができる。相手を引きつけることができる。それによって有利なスペースと時間を作り出すことができるというのは、なるほどなと。当時はよく知らなかったので、すごく勉強になりましたね」
「優勝が決まったときは、人生で一番嬉しい瞬間でした。積み上げてきたものが形となって表現できて、リカと一緒に喜べたのはかけがえのない財産になっています。だから、直後にリカが浦和レッズに移ると聞いたときは驚きましたし、寂しさも感じました。
「呼んでもらえてすごく光栄でした。と同時に、レッズで働くことの大きな責任を自分の中でよく考えたうえで、移籍を決断しました。実際に来てみると、ファン・サポーターの方々の情熱がすごく伝わってくる。その期待に応えられるような仕事を毎日していかないといけないな、と肝に銘じています」
(取材・文/飯尾篤史)