プロは目立ってナンボ。今季、レッズにはJリーグ指折りのヘアカタログを作れるくらいの個性派がそろっている。
京都サンガF.C.から復帰した荻原拓也は韓流系アイドルのような鮮やかな金髪をなびかせ、副キャプテンになったアレクサンダー ショルツは70年代のロック歌手顔負けの長髪で異彩を放つ。わが道を行く鈴木彩艶のサイドを短く刈り上げたシルバーヘアもパンチ力抜群だ。
そして、2023年シーズン序盤、最もインパクトを与えているのは、知念哲矢のスタイリッシュなもじゃもじゃ頭だろう。
大原の練習場でも、すぐに目を奪われる。アフロヘアがこれほど似合うプロスポーツ選手は、ほとんど見たことがない。同じ沖縄出身で、プロボクシング元世界王者の具志堅用高さんが持つ雰囲気ともまた違う。
金髪メッシュで現代風にアレンジ。チームメイトたちからは好評を博しており、『このまま続けたほうがいいよ。今年はそれでいけば』と言われ、笑顔を見せていた。
「イメチェン(イメージチェンジ)したくて。昨年から考えていたんですよ。25歳を迎えたし、年齢的にも最後かなって」
年末に故郷の沖縄に帰省した際に馴染みの『床屋さん』で3時間近くかけて、特殊なパーマをかけた。普通の美容室では、なかなか対応してもらえない代物だという。
実は2年前にも同じ髪型にチャレンジしており、FC琉球時代から知るファン・サポーターにとっては懐かしのスタイル。再びアフロに戻したのは、ただの思いつきではない。”勝ち運“を呼び寄せる効果もあるのだとか。
「2年前はシーズン前にアフロに変え、開幕から5連勝したんですよ。チームが良い流れに乗れたという過去があって……」
当時、知念は開幕から先発フル出場を続け、プロとして自信をより深めた。ピッチに立ってこそ、アフロの神通力は生きる。
今年2月14日のバレンタイデーでは、アフロ効果をさほど実感できなかったが、理解あるファン・サポーターの思いを大切にしている。あくまでこだわるのは、ピッチ上の結果である。
浦和レッズで迎えた2年目。知念は髪型以上に気合が入っている。今季、センターバック陣にはノルウェーから同じ左利きのマリウス ホイブラーテンが加わり、ポジション争いはますます激化。自らの置かれている立場を自覚する。
「ネガティブな感情を抱きそうになりましたが、気持ちを切り替えて、取り組んでいます。僕にしかないものもありますし、僕にないものはマリウスから盗んで、自分のものにしていきたい。特長を磨いていけば、出場機会も増えるはずです。いまはポジティブに捉えています」
練習では最終ラインから得意の左足で鋭い縦パスを通し、出足のいいインターセプトでアピールを続けている。昨季はリーグ戦9試合に出場し、1ゴール。自分に矢印を向けて練習に励み、ルヴァンカップ、AFCチャンピオンズリーグのピッチにも立った。今季はさらなる飛躍を誓う。
「昨季以上に試合に絡んでいきたい。シーズンの半分以上、スタートで出場できれば、きっと僕も変わってくると思います。これからが楽しみ。大きく成長できるチャンスです」
今季は決意のアフロで、レッズに多くの勝利を呼び込むつもりだ。
(取材・文/杉園昌之)
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