凍てつく寒さの昨年末、練習後にいつものようにチーム用具の後片付けをしていた。
YBCルヴァンカップでニューヒーロー賞を受賞するなど、充実したシーズンを過ごした早川隼平は、仕事の手を止め、シーズンオフの過ごし方について少し話してくれた。
「時間があるので、家族に勧められた本でも読もうと思っています。何冊かあるんですよ」
あれから2カ月。新シーズンの開幕を控えた2月半ばの昼下がり、早川にシーズンオフに読んだ本で印象に残っている作品を尋ねてみた。
「兄ちゃんが教えてくれた『「のび太」という生きかた』という本ですね。なるほど、と思うところがいくつかあって。アニメ『ドラえもん』に出てくる主人公ののび太はすぐに楽をしようとしますが、ドラえもんはそこで助けないんですよね。
挑戦したときに手助けをしてくれる。最初からサポートを求めたら、それはただ楽をしているだけになりますから。自分の成長にはつながらない。これは自分の人生にも通じるかなと思いました」
今季は実績ある多くのアタッカーが加入し、ポジション争いはし烈を極める。出場機会をつかむのは昨季以上に難しくなるかもしれない。
18歳の生え抜きも厳しい現状を把握していた。
「プロであれば、きっとみんなも悩むことはあります。サッカー選手には、いろいろな選択肢があると思うんです。自分にとって、何が最適なのかも考えないといけない。ただ、今は置かれている場所で、できることをやるのが大事だと思っています」
冷静すぎるくらい自分に矢印を向けている。楽をするつもりはない。大原サッカー場で、必死にもがいている。
トライ・アンド・エラーを繰り返していると、ドラえもんではないが、周囲の先輩から声をかけられるという。
「浦和レッズにはこれだけ良い選手が集まっているので、学ぶことは多いです。ペア マティアス ヘグモ監督、コーチたちとも話しています。自分の居場所って、自分ではどうこうできないこともありますが、最善を尽くすことは常にできるので」
レッズにはあんなこんなことも、不思議なポッケで叶えてくれるドラえもんはいない。自力でポジションをつかむために、きょうもひたむきにボールを追いかける。それが『早川隼平という生きかた』である。
(取材・文/杉園昌之)
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