大阪で浦和レッズの8番が大きく吠えた。
YBCルヴァンカッププライムステージ準決勝の第1戦で値千金の同点ゴールを叩き込むと、小泉佳穂は珍しく感情を爆発させた。
精神的な支柱として、チームをけん引する酒井宏樹が日本代表に招集されるなか、強い覚悟を持って臨んだ9月21日のセレッソ大阪戦。レッズでの存在価値が問われていることを自らに言い聞かせていた。
レッズの技巧派パサーは、軟弱ではない。恵まれた体格もなければ、特別な身体能力もないことを自認するが、豊富な運動量に裏打ちされた「ハードワークは持ち味の一つ」とはっきり言い切る。
ルヴァンカップ準決勝のC大阪戦でも、攻守両面で持てる力をいかんなく発揮した。
開始5分、献身的なチェイシングで屈強なマテイ ヨニッチからボールを奪い、GKとの1対1に持ち込んだ。最後のシュートこそ相手GKの清水圭介に防がれたものの、187cmの大柄なCBから球をかすめ取る守備技術は目を見張った。
闇雲に体をぶつけるわけではない。「予測力があれば、ボールは取れます」。本人が自信を持っているところである。
53分には、その先を読む力がゴールを呼び込んだ。伊藤敦樹のシュートをGKが弾くと、相手DFよりも早く反応して押し込んだ。
そして、72分に途中交代するまで、目を引いたのは中盤での勇気あるターン。ファウルで止められる場面もあったものの、相手の厳しいプレスが来ても怖がることはなかった。
バックパスで後ろに戻すことは少なく、選択肢の優先順位として高いのは前を向くこと。ボールを持って顔を上げれば、果敢にチャレンジする。
一度失敗しても、次もトライ。下を向かず、フィニッシュにつながるパスを狙い続けている。小泉のプレースタイルがブレることはなく、攻撃を勢いづけている。
「僕がチャレンジを止めてしまったら、選手としての価値がなくなるので。もっと点に絡めるようになっていけば、もう一段階上に行けるはずです。ゴール前で何ができるかが問われていると思います」
ミスを重ねるたびにレベルアップしていく25歳が、立ち止まることはない。
6年ぶりの決勝進出を懸けた準決勝の第2戦でも、チャレンジ精神あふれるプレーに期待は高まるばかり。恐れを知らない勇者は、埼玉スタジアムを沸かせるダメ押しのゴールをもぎ取りに行く。
(取材・文/杉園昌之)
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