「(アレクサンダー)ショルツが湘南ベルマーレ戦後の大切な2連休に『普通のオフではできないことをしよう』と言ってきたんです。それで、『日帰りで富士山に登るのはどうだろう』と」
「もともと僕は自然に立ち向かうようなタイプではないので。ただ、このタイミングでチャレンジしてみるのもいいかな、と思いました。素晴らしい体験になるかもしれないって」
「リュックサックに水とエネルギー補給用のスナックを入れてこいと言われました。あと、登山は汗をかくので着替えのシャツ、そして高度が高くなれば肌寒くなるから長袖の上着、歩きやすい靴を用意しなさいと」
“ショルツ隊長”が選んだのは富士宮ルートだった。最も標高の高い位置からスタートするため、山頂までの距離が短いのだ。ただし、傾斜が急で岩場も多い。初心者におすすめされているが、決して楽な道のりではない。
「ショルツのスピードが速すぎて……。彼はクレイジーですよ。途中のいくつかのステーションで待ってくれているのですが、すぐに先に行ってしまいます。ショルツは脚が長いからいいですけど、僕の脚は短いですから(笑)」
「このために富士山に来たんだと思いました」
「最初で最後です。本当にハードだったので。頂上の手前で撮影した写真を見てもらえれば分かると思いますが、このときは死にそうでした。酸素はかなり薄かったはずです」
「ここから下りないといけないのかって。そんなことを考えていると、ショルツは軽快に駆け下りていくので、必死について行きました。帰りは1時間40分で下山したんです。私にとっては、一生の思い出です。この先の人生でも『俺はあの富士山に登ったんだ』と言い続けるでしょうね」
(取材・文/杉園昌之)