いまの時代、好きな物を食べて、好きな物を飲んでいるプロアスリートなどほとんどいない。
浦和レッズでもコンディション管理の一貫として、昼食はクラブハウスで用意されている。普段の夕食は個人に任されているが、気兼ねなしに何でも食べているわけではない。
栄養のバランスはもちろんのこと、各個人の体に合った物を口にしている。選手個人で専属の栄養士を雇っているケースも珍しくない。
今シーズン途中にスイスのセルヴェットFCから加入したオランダ人のアレックス シャルクも特別なこだわりを持っているひとりだ。肉や魚などの動物性食品(乳製品を含む)は一切取らない『ヴィーガン』に目覚めたのは2年前。
「始めたきっかけは、セルヴェットFCのチームメイトだった元フランス代表のガエル・クリシーから教えてもらったんです。体の調子が良くなるよって。最初の4週間から6週間くらいはきつかったのですが、それを過ぎると何ともなくなりました。
いまでは、昔食べていた肉を食べたくなったりもしません。時々、フレッシュな魚だけは欲したりしますが、我慢できないほどではないです」
シャルクは食生活を改善したことで、フィジカルコンディションが格段に上がったという。
「顕著に効果が現れたのは、ケガ、疲労の回復スピードです。あきらかに変わったなと実感しています。もちろん、個人差はあると思いますよ。ただ、世界のプロアスリートが実践していることで、すでに証明はされていますけどね」
プロテニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ(セルビア)らが実践しているのは、つとに有名。世界では稀有な例ではないものの、日本のアスリートにはまだそこまで浸透していないのもかもしれない。
浦和レッズでもクラブの協力を得て、継続して実践している。早くもお気に入りのヴィーガン・レストランを見つけ、足を運んだ。銀座、池袋などに店舗を展開しているお店はおすすめだとか。
「とても良かったですよ。興味があれば、トライしてみてください。ただ、僕は人に押し付けることはしません。アスリートを含め、人によって合う、合わないがありますから。ひとつ言えることは、僕の体にはフィットしています」
にっこりと笑う顔の肌にも張りがある。もしかすると……
「きっとそれはヴィーガンの効果かもしれませんね。肌の調子もいいですよ。29歳の年齢より若く見えるのはいいことでしょう」
どうやら、美容効果まであるようだ。
(取材・文/杉園昌之)