日本のサッカー界において、12月は別れの季節である。今シーズンもまた、浦和レッズの仲間がチームを離れることになった。
2022年3月に加入したオランダ人アタッカー、アレックス シャルクの今季限りでの退団が決まった。
11月29日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2023/24の武漢三鎮戦は、シャルクにとって埼玉スタジアムでのラストゲームだった。
試合終了後にスタジアムを回っている際には、同胞のブライアン リンセンから「今、この瞬間を楽しめ。みんなが感謝してくれているぞ」と言葉をかけられた。
「浦和レッズのファン・サポーターのみなさんのサポートには感謝しています。本当にアメイジングで、素晴らしいスタジアムです。僕は毎秒、このスタジアムでプレーすることを楽しんでいました。このファン・サポーターの前でプレーできて、幸せでした」
この2年間、シャルクはいつだって全力で、そのプレーには魂がこもっていた。ゴールはいつも豪快だったから、印象的なシーンが少なくない。
加入間もない22年4月18日、タイのブリーラムに乗り込んだACL2022グループステージMD2山東泰山戦では、直接フリーキックを含む2ゴールと大暴れ。
今年3月31日の柏レイソル戦では、こぼれ球をゴール左隅に蹴り込むと、左サイドからのクロスで明本考浩のゴールをお膳立て。さらに印象的だったのが9月のYBCルヴァンカップ準々決勝のガンバ大阪戦での活躍だ。第1戦でゴール左上に弾丸ミドルを突き刺すと、第2戦でもこぼれ球を右足で叩き、2試合連続ゴール。準決勝進出の立役者となった。
「僕はピッチに立ったら、すべてを出し尽くすようにしています。それは毎日のこと。トレーニングでも日々ベストを尽くしているので、それが試合に繋がっていると思います」
だからこそ、負傷が多かったことが惜しまれる。
特に今シーズンは戦線離脱を余儀なくされる期間が長く、前述のG大阪戦でもゴールを奪ったあとに負傷し、しばらくピッチから離れることになった。
「今シーズンは、本当に不運でした。自分にとって良い流れになってきたときに限って怪我をしてしまった。怪我をしたら、またゼロから作り直さなければならなくなる。チームを助けることができず残念でした。
もしシーズンを通してプレーできていたら、7、8点は取れていたのではないかと思います。そうしたら今ごろは、まだリーグ優勝を懸けて戦えていたかもしれません。自分にとっても、チームにとっても残念だったと思います」
そんなうっぷんを晴らすかのように、G大阪戦以来の出場となった11月25日のアビスパ福岡戦では、リンセンのシュートがバーに当たって跳ね返ったところを蹴り込み、今季の公式戦4ゴール目をゲット。武漢戦でも相手DFに圧力をかけ、ホセ カンテの決勝ゴールを呼び込んだ。
「ホームのラストゲームだったので特別な気持ちでピッチに入りました。可能な限りエンジョイしてプレーしようと。ただし、プロなので勝たなければなりません。良い形で試合に入れました。僕ら(シャルクと引退するカンテ)が試合の流れを変えることができてハッピーです」
感傷的な気分にもなったはずだが、シャルクは「振り返っている暇はありません。ただ前を向いて前進するのみです」と力強く語った。
「良いシーズンを過ごしてきたのだから、最後には3位というポジションにいないと。自分たちの力を証明しないといけません」
J1リーグを3位で終えるために、ACLで決勝トーナメントに進出するために、そして、FIFAクラブワールドカップで勝ち進み、浦和レッズの一員として少しでも長く戦うために――。シャルクは最後の最後まで、全力を出し尽くす。
(取材・文/飯尾篤史)
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