「僕が止められなかったこともあって、宏樹が出られない状況になったので、キャプテンマークを巻いて次に進めるかどうかは、僕の人生において重要なことだと位置付けていました」
「この日のために僕は浦和に来たんだ、と感じていました。このシチュエーションを乗り越えられなければ、浦和は変わらない。僕は未来を作っていかなきゃいけないと思っていました。そこに、自分がこのチームに来た意味がある、と――」
「みんなのパフォーマンスは良かったし、マリノスは少し良くなかった。これは(2試合合計で)逆転できるなって。ただ、(早川)隼平のゴールが取り消されたように、勝負事には運も絡んでくる。僕としては、このパフォーマンスで勝てないのならしょうがない。そんな気持ちでみんなを信じ、勝利を祈るだけでした」
「こういうゲームでしっかり勝てるっていうことは、僕たちは持っているのかなって。今シーズンは大崩れすることなく、粘り強く戦えるようになったと感じています。リーグ戦で勝ち切れない試合が多いのは課題ですけど、選手もスタッフも120%の力を出して戦ってきたことも事実。浦和ってなんで勝っているんだろう、なんで負けないんだろうっていうゲームが今シーズンは多いと思うんですけど、それこそが浦和が強くなってきた証かなって」
「僕が加入した2年半前、浦和はプロ意識が少し足りないなって感じたんです。当時の浦和はスタイルにこだわる傾向があった。形から入るというか、綺麗に崩そうとするというか。もちろん、それも大事なんですけど、僕が9年間過ごしたヨーロッパでは、勝つか負けるか、それがすべて。
「ACL(AFC チャンピオンズリーグ)決勝が4月にあったから、そういうチーム作りにせざるを得ない部分もあったのかもしれませんが、監督の方向性や方針にブレがないので、チームとして勝利を目指して前に進みやすいのかなって思います。ただ、僕や他のベテラン選手も、プロとしての姿勢を示してきたつもりです」
「浦和の未来を作るうえで何が必要なのか、何をしないといけないのか、自分の中ですごく大事に捉えていましたし、同時にプレッシャーも感じていました。自分がここでプレーする意義というか、価値のある選手なのかどうかが問われる試合だと思っていたので、みんなの頑張りのおかげですけど、良い結果で終われて良かったです。延命できたというか(笑)」
「これは僕の感覚ですけど、おそらく浦和が僕を獲ってくれた理由は、あまりないと思うんです。エビデンスもあったかもしれないですが、どちらかと言うと、監督がリカルド(ロドリゲス)だからという文脈で獲って、『あなたに何ができるんですか?』と試されている。そこで結果を出せなければ、アウト。また新しい選手を獲ってタイトルに向かって戦う。
「そもそもACLの出場権自体(21年天皇杯優勝)、自分で掴んだものではないし、厳密に言うと、あれは2022年の大会なので。2023年で言えば、天皇杯は負けてしまったし、リーグ戦はまだ可能性があるものの他力に頼らなければならない。ACL(2023/24)のグループステージも厳しい状況にある。
「周作くんや慎三さん、阿部(勇樹)さんもそうですけど、彼らはクラブにとってレジェンド的な存在ですよね。でも、僕はそういう存在になりたいとは考えてなくて。どちらかと言うと、僕はショルツやマリウス(ホイブラーテン)、ホセ(カンテ)と同じ立場だと思っている。つまり、助っ人というか。その覚悟で来ているし、そうじゃないといけないと思って常にプレーしているので、居心地が良くなるようにはしていないんです――」
(取材・文/飯尾篤史)
後編に続く