生粋のインドア派で、“ぼっち好き”の安居海渡だが、昨季までは午前練習後の昼食を一緒に食べにいく“相棒”がいた。
4歳年下の工藤孝太である。
安居は浦和学院高等学校から流通経済大学を経て昨季加入。一方、工藤は浦和レッズの育成組織から昨季加入と、同期という以外に共通点はまったくない。
だが、ウマが合うというか、気が置けないというか、人付き合いが得意ではない安居にとって工藤は居心地のいい存在だった。姉のいる工藤の“弟気質”も理由のひとつかもしれない。
「『海渡くぅーん』って、ずっと言ってくる感じです(笑)。『ご飯行きましょうよ〜』って。かわいい後輩ですね」
オフが2日あれば、2日間まったく寮から出ないこともあるという安居が、工藤との食事のあとは、ふたりで買い物に行き、一緒に帰寮したというから、いかに仲が良かったかが伺える。
ふたりは同期の宮本優太とともに、シーズンオフにベルギー2部のKMSKデインズのトレーニングに参加した間柄でもある。
そして迎えた23シーズン、工藤はJ2の藤枝MYFCへの期限付き移籍を決断する。
「ベルギーから帰ってきた頃は『レッズでやりたい』と思っていたようですけど、その後、センターバックの層が厚くなりましたからね。このチームで高卒の選手がいきなり試合に出場するのは難しいから、『外で経験を積むのもいいんじゃないか』っていう話はふたりでもしたんです」
こうして離れ離れになったが、ふたりの関係性は今も変わらない。
「大乱闘スマッシュブラザーズ(スマブラ)」や「荒野行動」などのゲームをオンラインですることもあれば、LINEや電話でやりとりすることもある。藤枝の練習がオフで工藤が浦和に戻ってきたときには食事にも行った。
「プライベートの話もすれば、サッカーの真面目な話もします。孝太は3バックの左のポジションを狙っているようなんですけど、例えば、ボランチの動かし方に関して、どう指示をしたらいいかと聞いてきたから、『こうすればいいんじゃない?』と話したり」
残念ながら工藤はここまで出場機会を得られていないが、5月7日に行われたモンテディオ山形戦で今季初めてベンチ入りを果たした。
安居が3月4日のセレッソ大阪戦でゴールを決め、それ以降は途中出場ながらプレー時間を伸ばしていることに、工藤も刺激を受けているという。
「『俺も頑張らなきゃ』って言ってましたね。孝太ならいずれ、しっかりと試合に出てやれるんじゃないかと思います。そこは信じて応援しています」
そんな安居も、AFCチャンピオンズリーグ2022決勝を終え、メンバー入れ替えの可能性が高まるなか、ポジション奪取に燃えている。
(取材・文/飯尾篤史)
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