浦和レッズだけで積み上げてきた数字は、J1通算299試合。大台まで、あと1試合に迫っている。
加入9年目を迎えている西川周作は10月12日の北海道コンサドーレ札幌戦後、クラブ歴代7位となる試合数の重みをしみじみ噛み締めていた。
「多くの人に応援してもらい、背中を押してもらってきました。悔しい思いもしたし、うれしい思いもありました。そのすべてをひっくるめて、みなさんと共有してきた299試合です」
忘れられないのは、2014年3月23日の清水エスパルス戦。ガランとした埼玉スタジアムは静寂に包まれ、言葉にできないほどの虚しさを感じた。
コロナ禍の影響で再び無観客試合を経験するとは思わなかったが、今、Jリーグの日常を少しずつ取り戻しつつあるなか、ひしひしと感じている。
「ファン・サポーターの視線、拍手、そして声援が自分たちの力になっているんだな、とあらためて思いました。ここから、もっともっと喜びを分かち合っていきたいです」
14年にサンフレッチェ広島から完全移籍で加入。Jリーグを制覇したばかりだったが、新たな環境に身を置くことで成長できると信じ、新天地を選んだ。
その決断は間違いではなかった。レッズでは不動とも言える守護神となり、16年にYBCルヴァンカップ、17年にAFCチャンピオンズリーグ、18年と21年には天皇杯と4つの主要タイトルを獲得した。
毎シーズンのように自らを律し、試合の準備をしてきた自負がある。
「今も目の前の1試合、1試合が最後のチャンスだと思いながら、がむしゃらに頑張っています。ただ、加入当初はレッズでここまで試合数を重ねることができるとは思わなかったです」
今季からはスペイン人のジョアン ミレッGKコーチの指導を受け、目を輝かせながら意欲的に新しいトレーニングに取り組んでいる。
毎試合、自らのプレーの反省も欠かさない。札幌戦後もすぐに失点を見つめ直し、防ぐ手立てがあったと漏らしていた。
「どうにかできたという悔しさが残ります。あのようなシチュエーションの練習もしていましたから」
36歳となった今も、成長への意欲が衰えることはない。
昨季はスタメンの座を一時奪われることもあったが、悔しさを糧に変えて、さらなるレベルアップに励んできた。
「若い鈴木彩艶が台頭してきたおかげで、これまで以上に危機感を持って練習に臨めています。年齢を重ねてきて、若いときにはなかった感覚がありますね。緊張感を楽しんでいるし、下からの突き上げが良い刺激になっています」
今シーズンはまだ終わっていない。10月29日、敵地に乗り込む横浜F・マリノス戦でも先発のゴールマウスを守るために練習から気合を入れている。当然、目の前でリーグ優勝を決めさせるつもりはない。
「目指すのは無失点勝利。ひとつでも順位を上げます」
レッズ300試合の節目は、清々しい最高の笑顔で迎えるつもりだ。
(取材・文/杉園昌之)
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