7月10日に行われたFC東京戦に3-0と勝利し、西川周作がJ1リーグ通算170試合無失点の歴代最多記録を樹立した。この偉大な記録を称えるべく、西川自身に思い出深いシャットアウトゲームを5試合選んでもらった。浦和レッズのゲームからセレクトされたのは、あの3試合だった。
#1 05年5月21日 柏 0-1 大分
ヤマザキナビスコカップ
企画の趣旨からするとリーグ戦が対象ですが、1試合だけナビスコカップのゲームを挙げさせてください。この試合は僕のプロデビュー戦。会場は日立台で、ピッチと客席の距離が近いじゃないですか。それがすごく楽しみで。前半は大分のゴール裏の前で守って、後半は柏側だったんですけど、すごくヤジられたのをよく覚えています(笑)。でも。それでビビるのではなく、「よっしゃ、絶対に勝ってやる」というマインドになった。
この試合は緊張することなく、意外とスムーズに入れました。リーグ戦デビューとなった(7月2日の)横浜F・マリノス戦のほうが緊張しましたね。前半は攻められる場面があったんですけど、80分にドドが決めてくれて、安心したのを覚えています。この完封勝利は、自分にとって「プロとしての第一歩」という感覚だったので、大切な思い出です。
#2 13年12月7日 鹿島 0-2 広島
J1リーグ第34節
リーグ2連覇が決まった試合です。この試合を迎える時点で、僕たちは2位。僕たちは勝利したうえで、首位のF・マリノスが負けなければ優勝はなかった。そういう意味ではメンタル的にリラックスして臨めました。ゲームは35分に石原直樹選手が先制し、前半のうちに相手の大迫勇也選手が退場となった。大迫選手は海外移籍が決まっていたため、鹿島アントラーズでのラストゲームで気合が空回りしたのか、塩谷司選手に後ろからタックルしてしまって。
後半に入って石原選手が2点目を決めると、ソワソワしてベンチを気にし始めて(笑)。僕たちのほうが早く終わって、もう祈りました。そうしたらF・マリノスが敗れたという情報が飛び込んできた! あのドキドキはそれまでに味わったことのないものでしたね。
#3 14年3月1日 G大阪 0-1 浦和戦
J1リーグ第1節
次に挙げるのは僕のレッズでのファーストゲームです。前年、レッズは失点が多かったので、自分が来た意味を示さないといけないと思って、なんとしてもゼロで抑えようと思って、敵地に乗り込んだゲームでした。試合は前半の終了間際にマキ(槙野智章)が決めてくれて、その1点を守り切ることができました。この勝利で僕自身は気持ちがすごく楽になりました。
ガンバのGKは同じ年の東口順昭選手。彼もアルビレックス新潟からガンバに移籍したばかり。そういう意味でも負けられない試合でしたね。東口選手とはその後、日本代表でチームメイトになってから親しくなって、「同い年、頑張ろうぜ!」っていつも高め合う関係になりました。
#4 16年9月25日 浦和 3-0 広島
J1リーグ2ndステージ第13節
結果的に3-0で勝利したんですけど、すごく攻められて、ピンチの連続だったんです。ピーター ウタカ選手がすごく危険な存在で。でも、来るシュート、来るシュート、防いでいるうちに楽しくなってきて(笑)。気持ちが乗っていくのが自分でも感じられて、試合が終わったときに充実感をすごく覚えたゲームでした。
やっぱり古巣との対戦は燃えるものがあるし、青山敏弘選手をはじめ、一緒に戦った選手もたくさんいましたからね。それにこのシーズンはYBCルヴァンカップで優勝したり、リーグ戦でも最も勝ち点を獲得して非常に充実したシーズンでした。それを象徴するのが、この試合でしたね。
#5 22年6月18日 浦和 3-0 名古屋
J1リーグ第17節
この試合も終わってみれば3-0で勝利したんですけど、序盤に決定的なピンチを迎えたんです。僕から見て右サイドからグラウンダーのクロスが入ってきて、稲垣祥選手が飛び込んできた。稲垣選手がシュートを打ったとき、タク(岩波拓也)と被ってボールが見えなかった。しかも、タクの足に当たってコースが変わったんですけど、僕が右手で掻き出した。咄嗟のことでしたが、練習どおり下から手を出すという基本的な動作ができました。
このセーブによって流れがレッズに傾いて、チームが得点を重ねてくれた。久し振りにスッキリ勝てた試合でもあったし、GKがゲームの流れをコントロールするという自分の理想的なゲームでもあった。なので、この試合もとても気に入っています。
(取材・文/飯尾篤史)
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