【テニス】3年目にして確立しつつある”伊達プロジェクト”の理想形。沖縄合宿で見えたその兆候とは?
練習の合間に響く「きついー!」の声に、明るい色彩がきらめく。
「これだけ人数がいると、やっぱり賑やかですね」
若い選手たちを見やり、伊達公子さんも笑みを広げた。
4月末に沖縄県で開催された、『リポビタン Presents 伊達公子×YONEX PROJECT ~Go for the GRAND SLAM~』(以下伊達プロジェクト)。その2期を対象にした、沖縄県キャンプでの1コマである。
テニスの練習のみならず、トレーニングにも多くの時間を割いた今回の沖縄キャンプ
“伊達プロジェクト”は、世界の4位まで上り詰めた伊達公子さんが、3年前に立ち上げた女子選手の若手育成プログラム。4人でスタートした第1期生が昨年春に卒業し、続いて11歳~14歳(開始当時)の少女8名による第2期がスタートした。
今回の沖縄キャンプは、2年間で8回行われる強化合宿の4回目。その光景を見て印象に残ったのは、プロジェクト生たちの明るさと積極性だ。
錦織圭のサプライズ登場が、一層の華やぎを添えもした。その“臨時コーチ”に対しても、少女たちは進んで質問し、敬意を示しながらも物おじすることはない。
選手が疑問や意思を言葉で表現すれば、指導も具体性を増す。伊達さんが目指す“プロジェクト”のスタイルが、具現化しつつあるように映った。
”錦織コーチ”にも、技術面の疑問を積極的に尋ねる選手。動画の少女は添田栞菜。叔父は世界最高位47位、現役選手の添田豪である
その事実を示す、一つの傾向がある。それは8人の選手たちが、高い目的意識を胸に伊達プロジェクト生となったことだ。
「友人が伊達さんのプロジェクトの1期生に選ばれ、色々教えてもらっていたので羨ましいと思ってました」
そう語ったのは、第二期生の中では上級生格の木河優。同様の発言は、網田永遠希ら複数の選手たちからも聞くことができた。
“伊達プロジェクト”の勘所は、オーディションに応募してきたジュニア選手の中から、伊達さん自らがプロジェクト生を選出する点にある。1期生を対象とした2年間の活動が評判となり、多くのジュニア選手たちが「次はわたしが!」と切望していたのだろう。
さらには、今年1月の全豪オープンJr.本戦に出場した2期生・木下晴結の急成長も大きい。“Go for the GRAND SLAM”のサブタイトルが示すように、伊達プロジェクトの目的地の一つが、グランドスラムJr.出場。15歳になった木下が、そのハードルをクリアしたプロジェクト生第一号となった。
“木下効果”については、伊達さんも次のように語る。
「2期生が始まった時は大きな差がなかった中で、木下さんが、一つの大会で優勝したのをきっかけに連続優勝して、全豪ジュニアのチャンスを手にした。他のメンバーも、同じ道をたどれば可能性が広がる。凄く良い刺激になっているだろうし、なって欲しいと思います」
なお木下は、全豪Jr.出場時に憧れのアシュリー・バーティと言葉を交わし、一緒に写真を撮る僥倖も得た。
今回の合宿では、他の選手たちも「どうやってバーティと会えたの?」「どんな感じだった?」と興味津々。木下が持ち返った世界の風は、間違いなく仲間たちの肌に触れ、視線を遠くに向けさせている。
切磋琢磨で育まれる、自己表現力と世界で戦う意識。
それらが、沖縄合宿で見られた明るい光の熱源だ。
錦織・伊達組とボレー・ボレーで対戦した選手たち。レジェンドペア相手にも物おじしないメンタリティが頼もしい
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