【女子テニス】今季急成長の16歳。日本のホープ齋藤咲良のテニスが「めっちゃ変わった」契機とは?
ジュニア世界ランキング7位。そして一般の世界ランキング759位。
10月に16歳の誕生日を迎えたばかりの齋藤咲良は、今年躍進した日本女子テニス界期待の若手だ。
今年1月に見た齋藤の印象は、低い軌道のカウンターショットを早いタイミングで広角に打ち分ける、いわゆる“相手の時間を奪う”タイプの選手だった。
それがここ最近は、大人とのラリーでも打ち負けない。高い軌道のボールを用いて打ち合いを制御するプレーは、どこか余裕すら漂わせる。
11月中旬の安藤証券OPで勝利する齋藤(手前)。動画提供:安藤証券オープン
実際に戦績を見ても、7月まではジュニア大会で11勝8敗。それが8月以降は19勝4敗と大きく勝率が上昇している。
一般のツアー大会でも、序盤の3大会は1勝2敗ながら、9月以降の3大会では9勝3敗。前期と後期で、大きな成長の跡が見られた。
こういう時、安易に「きっかけは?」と聞いてしまうのは、取材者の悪い癖。そんな時に選手からは「今までの積み重ねです」との答えが返ってくるのが常だ。
ところが齋藤は、「アメリカのカレッジパークでの大会でした」と、成長の起点を明言した。
それは8月。米国メリーランド州の小さな町開催の国際ジュニア大会で、頂点に駆けあがった時のこと。
中でも齋藤が「あの試合」と力を込めるのが、準決勝である。
この試合で対戦したミラ・アンドレワは、齋藤より一歳下だが、既に世界300位につけるテニス界の新星。
その天才少女相手に、齋藤はストレートで完勝したのだ。
以下、齋藤の述懐。
「あの試合では、本当にミスの量が急激に減って。自分でボールをコントロールできるようになり、無理に打たなくても相手のミスを誘えるようになった。力加減が分かったというか、テニスが分かってきたんです」
自身の内でつかんだ手応えは、外部の目からも指摘されることで、明確な輪郭を得る。
とりわけ齋藤を喜ばせたのが、同期の友人にしてライバルである、木下晴結の言葉。
「ウィンブルドン(6月末)の頃から、めっちゃテニス変わったね」
友人のその一言が、「すごく嬉しい」と齋藤は顔をほころばせた。
もちろん「めっちゃ変わった」テニスも、天から降ってきたものではない。中学を卒業し通信高校に通い始めたこの4月から、「トレーニングに力を入れ、練習も試合を想定して戦略面に力を入れてきた」という。
フィジカルが強化され力負けしなくなれば、自分から展開する余裕も生まれる。そこに戦略理解度が加わり噛み合った契機が、夏のアメリカだったのだろう。
来年はまだジュニア大会に出られる年齢ではあるが、本人は「グランドスラムJr.以外は、一般の大会に出ていきたい」という。
当面の目標は「来年の今頃には、世界ランキング400位を切ること」。その先に、世界最高峰の舞台を見据えている。
齋藤咲良(さいとう・さら)
2006年10月3日生まれ、群馬県出身。2019年エディ・ハー国際ジュニア選手権14歳以下で単複準優勝を果たすなど、早くから国際大会で結果を残す。
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