軽快なステップでフォアサイドに回り込むと、左腕を一閃、鋭い弧を描く強打を打ち込む。
スライスで相手を崩し、チャンスと見るやネットに詰めて、豪快なスウィングボレーを叩き込む。
これら躍動的な攻めのテニスは、土居美咲のトレードマーク。
ただ……僅か一週間前のバンクーバー開催の“バン・オープン”では、見ることのできなかった姿でもあった。
全米OP予選2回戦。フォアで攻める彼女らしいプレーが光る
「いや~、ニューヨークに入った最初の練習も良くなくて、ちょっとショックだったんです」
全米オープン予選2回戦後。A・カダントゥに6-3,6-1で快勝した土居は、ざっくばらんに、そう明かした。
予選1回戦も自慢の左腕が冴えたが、その手ごたえを得られたのは、数日前だったという。
ここ半年ほど土居が抱えてきた悩みは、「新たに取り組んできた前に出るテニス」と、従来のプレーとの葛藤だ。
「前に出なきゃ出なきゃと思うと、余裕がなくなる。いっぱい、いっぱいになってしまっていた」
迷いの中で勝利に見放されると、焦りが困惑に拍車をかける。
3月末のマイアミオープン以降の土居は、12試合戦い、得た勝利は一つ。
「自信も失っていた」と認めた。
その葛藤の中で、彼女は一つの大きな決断を下す。
8年師事したコーチのクリス・ザハルカと、袂を分かつことにしたのだ。7月に解消して以降は、コーチを付けず、一人で自分のテニスに向き合い、自分で自分を鼓舞してきた。
「試合前も試合中も、自分を洗脳してますよ! 『私は強い! 私は出来る!』って」
予選二回戦も勝利っ‼️
— Misaki Doi 土居美咲 (@MisakiDoiTennis) August 25, 2022
明日11時から予選決勝です🔥
引き続き応援よろしくお願いします😁🙏@usopen #usopen #usオープン #テニス #土居美咲 #勝利 pic.twitter.com/pFIb9oCrKH
苦笑いで、彼女が明かす。
「今までやってきたことと、自分がやりたいテニスを組み合わせて、自分なりに考えて取り組んでいる段階……という感じでしょうか」
それが、彼女が俯瞰する現在地。“生徒”の立場に身を置いた師弟関係から離れ、自身で考えに考えた末に、一つの解を得つつあるのだろう。
今、標榜するのは「フォアで攻める軸は変えず、前後の動きを取り入れたテニス」。
だからこそ、初戦のマッチポイントで「私には珍しくボレーで決めた」ことを、彼女は素直に喜んだ。
初戦のマッチポイントで、ボレーを決めて試合を締めくくった土居。撮影:奈良くるみ
ランキングを少し落としたため、今回の全米オープンは、グランドスラム12大会ぶりの予選からの挑戦になる。
本戦の切符と共に、真の自信をも手にするべく、8月26日(現地時間)の予選決勝に臨む。
土居美咲(どい・みさき)
1991年4月29日生まれ、千葉県大網白里市出身。159cmと小柄ながら、左腕のフォアハンドを軸に豪快に攻めるテニスが身上。シングルスで1つ、ダブルスでも2つのツアータイトルを持つ。
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