「試合を通じて、こんなにサーブが良かったことは記憶にない」とダニエル太郎が言ったのは、全豪オープン本戦出場を決めた予選決勝戦後、14日のことだ。
そして迎えた18日の本戦初戦。ダニエルのサーブは、依然、絶好調である。
それは最速205キロを計測したスピードや、8本を数えたエースの数のみを言っているのではない。
それ以上に重要なのは、87%を記録したファーストサーブでのポイント獲得率。ちなみにセカンドサーブでも、70%の高確率を保っている。
その好調の理由とは、何か?
要因は複合的だが、次の動画にこそ、大きなヒントが映し出されているだろう。
ベースラインから下がらず相手を押し込んでいくダニエル
ダニエルといえばかつては、コート後方に下がり、ボールを拾いまくる“粘り強さ”が代名詞だった。
その彼が今は、ベースラインから下がらず、相手を押し込みポジションあげていく。
変革の一つの起点は、一昨年。当時の新コーチと共に攻撃テニスを標榜したダニエルは、ラケットを短くし、スウィングをコンパクトに変え、早いタイミングでボールを捉えるプレーに磨きをかけた。
その上で彼は、「サーブ練習にも時間をかけた」という。
サーブ強化に迷いなく専念できたのは、「3本目」への自信があればこそ。
自分のサーブが速くなるということは、相手のリターンが早く返ってくるということでもある。
かつてはそんな深いリターンに、押し込まれる場面もあった。だが今のダニエルなら、ベースライン上でさばくことができる。
「サーブを打ってから押し込み続けられる。次のポイントでどれだけ押し込めるかが大事なので、それが上手くいっていると思います」
本戦の快勝後にも、ダニエルは勝因を分析した。
取り組みの正しさを勝利で裏付けるダニエルが、20日の2回戦で対戦するのは、元世界1位のアンディ・マリー。
人工股関節の大手術を経て、奇跡的な復活ロードを走る、言わずと知れたかつてのトップランカーだ。
ダニエルが標榜するプレースタイルは、マリーと重なるものもある。
「彼の生き方やテニスへの愛を尊敬する」と敬意を向けるマリーこそ、ダニエルにとり、自分の生き方やテニス愛をぶつける、これ以上にない相手だ。
ダニエル太郎(だにえる・たろう)
1993年1月27日、米国ニューヨーク市生まれ。アメリカ人の父親の仕事の都合で、幼少期からアメリカ、日本、スペインに移り住む。
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