1月13日午前、大阪湾の淀川河口付近に迷い込んでいたクジラの死亡が確認された。クジラは1月9日に発見されたが、11日から潮を吹くなどの動きがみられず、衰弱していた。
このクジラは今後、どうなるのか。一般財団法人・日本鯨類研究所の田村力(つとむ)さんに聞いた。
「今後の対応は大阪市が検討することになると思います。今回のようなケースや、海岸に打ち上げられた場合などは、その自治体や港湾局など、その場所を管理する団体が対応することになります。
よくある対応としては、海岸に穴を掘って埋めることです。そこで自然に返すということですね。欲しいという博物館や研究機関があれば、そこが引き取ることになります。ただし、クジラの体は非常に大きいので、引き上げるにしても相当な機材とお金が必要になります」
クジラの種類は「マッコウクジラ」とされるが、なぜ淀川に?
「マッコウクジラは深海域に生息するので、今回のように川にまで入り込んでくるのは、普通ではありえない話です。自ら進んで来たというよりは、衰弱して迷い込んだものだと思われます。
体長は8メートルとされていますが、メスであれば9~10メートルで性成熟しますので、大人に近い個体。オスならばもっと大きくなるので、まだ子供でしょう。
ただ、実際には8メートルではなく、さらに大きいという情報もあります。成熟したオスの大きさ、たとえば15メートルならば、その重さは50トンにもなります」
クジラの死骸が爆発するということもあるというが、本当なのか。
「本当の話です。死後、腐敗が進んで体内でガスが発生し貯まり、なんらかの拍子で穴が開いたとき、中のものが飛び出すという現象です。爆発というよりは、中のものが噴出するという感じです。内臓は腐敗していますので、ドロドロのものが周囲に飛び散るわけです。
これはかなり危険なことです。そこに未知のウイルスや病原菌が含まれている場合もあるわけですから。
ですから、浜にクジラが打ち上げられることはよくありますが、安易に手を触れないようにしていただきたいのです。今回の大阪のケースもそうですが、死因がただの衰弱ではなく、なんらかの病気ということもありえますので。当然ながら、食べることも危険です。過去には集団食中毒が起きた事例もあります」
1950年、和歌山県勝浦沖で浮遊していたツチクジラを捕鯨船が引き上げ、解体後に市販。172名が食中毒を起こし、2名が死亡。1987年には北海道泊村の海岸に打ち上げられたクジラが解体後販売され、53名が食中毒を起こしている。
これら2例では、クジラの生存中に、サルモネラ菌が増殖していたと推測されている。また1988年にも、死亡漂流していたクジラが北海道で漁網にかかり解体され販売、500名以上が食中毒を起こしたこともある。
なかなかの厄介者なのだ。
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