「全国で相次いで明らかになる給付金詐欺のなかでも、この事件は若者たちが主導していて、しかも今回逮捕されたのは24歳の国税局職員。なんでそんな詐欺に手を染めてしまったのか…という印象が捨てきれません」(テレビ局記者)
6月2日、警視庁は新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金を騙し取ったとして、仮想通貨投資グループに関係する20代の男女計7人を同日までに逮捕したと発表した。
2日に逮捕されたのは、東京国税局鶴見税務署職員の塚本晃平容疑者(24)と、会社員の佐藤凜果容疑者(22)。
このグループは高校生や大学生の若者を中心に、LINEのグループチャットなどで「暗号資産に投資すれば個人事業主になれるので、給付金が申請できる」などと虚偽の説明をし、不正受給をさせた疑い。被害総額は2億円を超えるとみられている。
グループの主犯格とされる30代の男は、現在ドバイに逃亡中。また、中核メンバーだったとみられる3人の男は、すでに逮捕、起訴されている。
今回逮捕された塚本容疑者はあくまで“下っ端”だったとみるのは、全国紙の社会部記者だ。
「東京国税局職員の塚本は、国税局の元同僚で、グループの中核メンバーだった中村上総(なかむら・かずさ)被告(24)に勧誘され、今回の詐欺に加担しました。
塚本と中村は、同じ熊本県内の小中学校に通っていた幼馴染みでした。とはいえ、塚本が担っていたのは、確定申告書の作成係といった事務作業。申告書の作成そのものは中村でもできることなので、“使い走り”のような立場だったのでしょう。
国外逃亡中の男と中核メンバーの3人は、それぞれ1000万円以上受け取っていたとみられますが、塚本が受け取っていたのはわずか120万円です」
今回の給付金制度を狙った詐欺のスキームを構想したのは、中核メンバーの一人である中峯竜晟(なかみね・りゅうせい)被告(27)だ。
中峯被告は明治大学を卒業後、大和証券に入社。首都圏にある支店の営業部に所属していたが、3年ほどで退社。
ドバイに逃亡した主犯格の男の仮想通貨ビジネスのために投資サークルを立ち上げて運営していた。
「中峯の投資サークルでは、金融商品取引法で禁止されている個人での一任勘定で投資をおこなっていました。投資をおこなうメンバーを集めてくることで、紹介者にマージンが入る“ネズミ講”的な契約になっていて、この運営にも関わっていた中村が塚本を引き入れたようです。
ただ、資金は思うように集まらず、金策に困った中峯が持続化給付金を狙った詐欺での資金集めを思いつき、中村らと実行したというわけです」(同前)
大学在学中の中峯被告を知る女性は、「インカレサークルに参加するような普通のコだった。留学やビジネスの夢を熱心に話していた記憶はあるが、あまり印象に残るタイプではなかった」と語っている。
この中峯被告に誘われて給付金詐欺に加担したのが、佐藤容疑者だ。別の全国紙記者によると、2人は一時期交際し、同棲していたという。
「佐藤は新潟県の出身で、高校卒業を機に上京しています。東京西部にある不動産会社で働いていましたが、逮捕時にはすでに退職していました。
近隣の住人には、佐藤が勤める店舗の前を掃除していた姿を記憶している人もいました。その店舗は中峯の実家近くにあり、不動産取引で店を訪れた中峯と知り合い、やがて交際に至りました。中峯が逮捕される直前まで、港区内の高級マンションで同棲生活を送っており、佐藤もそうした派手な生活を送るうちに、給付金詐欺を手伝うようになっていったとみるのが自然でしょう。
2人は年明けから任意での事情聴取を受けており、交際はその時期に解消したようです」
一見普通に見える若者たちが起こした、大規模な給付金詐欺。捜査関係者によれば、ドバイに逃亡中の男は、近く国際指名手配される見込みだという。
何が彼らを駆り立てたのか、全容の解明が急がれる。
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