「自分が謝ったら手を出さないですか」
そう言って土下座する男子高校生の頭を無慈悲に踏みつけ、一方的に殴る蹴るの暴行を加える男ーー。
1月23日、JR宇都宮線の車内で起きた暴行事件は、その映像のショッキングさから注目を集めた。電車の中で喫煙していた宮本一馬容疑者(28)は、男子高校生のAさん(17)に注意されたことに逆上し、車内及び駅ホームで10分以上にわたって暴行。Aさんは右頬骨骨折等の重傷を負った。現場を立ち去った宮本容疑者は同日夜、宇都宮駅で身柄を確保された。
宇都宮市内のホストクラブで働いていると供述している宮本容疑者。彼の接客を受けたことのある女性が語る。
「接客はよかったですよ。歌舞伎町でも働いていたというので、『歌舞伎町、鼻くそ溜まるでしょ?』ってボケたら『溜まる、溜まるー』って。奈良県出身と言っていましたね」
彼が生まれ育った奈良県のある町を本誌が訪れると、複数の住民が思春期時代の宮本容疑者を記憶していた。彼が育った家の近隣住民は、当時の印象をこう語る。
「共働きの両親と兄弟の4人家族で、一馬は長男。とにかく、見るからに普通でなかった。おうても挨拶せえへんどころか、顔合わせたら、こっちを睨み返してきおったからな。中学を卒業するかせんかのうちに、家からおらんようになった」
宮本容疑者と中学の同級生だったという男性も、「中学のころからものすごく凶暴。とにかく札付きのワルだった」と、吐き捨てるように言った。
一方、被害者となったAさんは「おっとりした子だった」と近所の住民が語る。
「ずっと野球をやっていたね。納屋にはバットやダンベルなどのトレーニング機器があって、自主トレに励んでいるところをよく見たよ。事件に巻き込まれたのがAくんと聞いてびっくりしたんだ」
宮本容疑者はなぜ “キレ” たのか。下野署に勾留されている本人に面会を申し込んだ。
面会室で待つ記者を威嚇するように、肩で風を切り現われた宮本容疑者は紺のジャージ姿。不機嫌そうな表情からは、警戒している様子が見て取れる。開口一番、「気に入らなかったら帰るから」と言い放つと、宮本容疑者は報道とは異なる意外な主張を語り出した。
「高校生から『お兄さん、タバコやめてもらえませんか?』と注意された? 全然そんな優しい言い方じゃなくて、車両全体に響き渡るような大声で、『おい、何タバコ吸ってんだよ!』みたいに言ってきたんですよ。それで喧嘩売られてるのかと思ってカッとなって。そしたら、向こうが先にガッと首を掴んできたんですよ。ここ、痕あるやろ?」
そう言って襟元をはだけた彼の首筋には、爪が食い込んだような痕が見て取れた。
「で、言い合いするうちに、向こうがまた俺の首を掴んできて、俺も完全に頭に血が上って。で、『やんねんな?』って(言った)」
被害者が「自分が謝ったら手を出さないですか」と言ったにもかかわらず、暴力を振るったことについて記者が糺すと、「そんなん言ってた? 全然覚えてへん。タバコ吸ったことと、やりすぎたことは悪いと思ってるよ。俺は育ちのいい人間じゃないから、怒ったら止まらんとこはある。朝まで酒を飲んでたしな。
だけど、普通に注意してきたら、『あ、ごめん、ごめん』ですんだ。それに向こうは、背も俺より全然デカいし、サングラスもかけてて、高校生とは思わんかった。向こうが先に手を出してきたから、しばき倒しただけのこと。喧嘩売る相手を間違えんなよと言いたい」
身勝手すぎる主張と言わざるを得ないが、車内に居合わせた乗客も、「大きな声で注意するのは聞こえた」という。
「青年が宮本容疑者に向かって何か大きな声で怒鳴っていました。その後、自分の席を立ち、寝転ぶ宮本容疑者の前まで行くと、見下ろすような形で何かを言っていた。逆上した宮本容疑者がダウンを脱ぐと、腕に入れ墨が見えました。それで青年も焦ったんじゃないでしょうか。
土下座しようとする青年に『いいよ、顔を上げなよ』と言って止めに入っている宮本容疑者の友人らしき男性もいましたが、その男性まで激しい勢いで突き飛ばして、一方的に青年に暴行を加えていました」
あまりに短絡的すぎる、今回の宮本容疑者の暴行。奈良の実家の両親はどう考えているのか。インターホンを鳴らすと、「もう全然つき合いがないんです。すみません」とだけ言い残し、通話は切られたーー。
外部リンク