7月25日、中国政府は秦剛(しん・ごう)氏を外相職から解任することを公表した。解任理由について、中国政府からは一切の説明がないままだ。
その一方で、失脚の原因として取りざたされているのが、香港の女性ジャーナリストとの不倫なのだが、その真相はーー。
中国事情に詳しいジャーナリストの角脇久志氏が語る。
「秦剛氏の不倫相手とされる傅暁田(ふ・ぎょうでん)さんは、1983年生まれの40才。2009年にイギリス駐在記者となり、2012年には香港のフェニックステレビ本社に入局しています。2022年まで各国の主要な政治家との対談番組『風雲對話(Talk With World Leaders)』を担当し、この番組で泰剛氏も取材をしています。
傅暁田さんは未婚ですが、2022年11月にアメリカで出産し、子どもの父親がアメリカ人ではないことを発表しています。
そして、2023年4月、飛行機内で子どもと一緒に撮影した写真をTwitterに投稿。秦剛氏を取材したときの写真も一緒に投稿していたことで、子どもの父親が秦剛氏ではないかという噂が一挙に広まりました。それが、今回の失脚の原因のひとつだと言われています。
傅暁田さんがスパイだったと中国政府が見ていると報道している台湾メディアもあります。
また別の分析では、秦剛氏の失脚を、今回外相に復帰した王毅氏との権力争いに敗れたとの見方もあります。愛人スキャンダルも、権力争いに利用されたということです」
習近平氏に気に入られ、異例の出世街道を歩んでいたとされる秦剛氏。そんな人物が失脚し、王毅氏が外相に再任することで、中国外交にはどのような影響があるのか。
「駐米大使を歴任するなど、親米派の泰剛氏が失脚させられたことで、王毅氏側の反米派が勢いを増す懸念はあります。王毅氏が再び外相を兼任することで、彼の外交部での権力はさらに大きくなり、アメリカ陣営である日本に対する “戦狼外交”(中国による威嚇や恫喝も含む攻撃的な外交スタイル)も、より強くなる可能性が予想されます。
王毅氏は日本語も堪能で、2004年には駐日大使として日本に赴任、日本の政治家とも交流をおこない、親日派として知られています。
しかし、その一方で、習近平主席の一挙手一投足だけを気にしているような人物で、典型的な “ヒラメ” などとも揶揄されています。外相に就任してからは、中国の戦狼外交に則って、日本に対しても強い姿勢で非難する発言に終始してきました。
特に、最近の福島第一原発からの処理水放出問題でも、科学的根拠を無視し、強硬に反対する発言をしています。今後も、日本にはますます厳しい態度で臨むと予想されます」
失脚した秦剛氏は、6月25日を最後に表舞台から姿を消し、その後の消息は不明。相手とされる傅暁田氏のツイートも、4月11日が最後となっている。
写真・Talk With World Leaders/EYEPRESS/Newscom/アフロ
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