北京五輪の最終日である2月20日、フィギュアスケートのエキシビションがおこなわれた。後半では、北京五輪4位、ソチ・平昌五輪を2連覇した羽生結弦も登場。白を基調とした優雅な衣装で、『春よ、来い』を熱演した。
プログラム中盤では、氷上を這うように滑るハイドロブレーディングで、リンクに口づけするような仕草も。フィナーレに登場した大会マスコットの「ビンドゥンドゥン」がうっかり転倒すると、すかさず羽生らが助け起こす微笑ましい場面も見られた。
中国のSNS「微博(ウェイボー)」では『春よ、来い』の検索数が1位となり、ツイッター上でも関連ワードがトレンド入り。羽生の演技に感動する人が続出している。
《羽生結弦人間国宝にした方がよくない?》
《羽生選手のエキシビションには感動した~。音楽を表現しきってましたね。春を呼ぶ精霊のようでした》
《体だけじゃなく心の痛み葛藤やプレッシャー責任全てを捨て切って、ただ自分の持つ魅力だけであの世界を独り占めした羽生くんはやっぱり最強だし最高にかっこいい…私の中ではこれがNO.1》
選曲には、こだわりがあった。演技後のインタビューに応じた羽生は「世の中にはたくさんつらいことがある。どうしても逃げられないつらさや、何も言えないで苦しんでいる人に、春が来たらいいなと思って滑りました」と明かしている。
足首のケガをおして、最後まで滑り切った羽生。実は、かつて「どん底まで落ち切った」不調の時代に、自身を救ったのも『春よ、来い』だった。
2020年12月の全日本選手権。羽生は5年ぶり5度めの優勝を果たすのだが、競技終了後のインタビューで、葛藤が大きかったと明かしている。コロナ禍によるコーチ不在で、トレーニングや振付を自分で考えるプレッシャー、4回転アクセルが成功するかどうかの不安も抱えていたという。
「どん底まで落ちきった。なんか、自分がやっていることがすごく無駄に思える時期があった。
一人だけ取り残されているというか、ただただ、暗闇の底に落ちていくような感覚があった。
一人でやるの、もう嫌だ、疲れたな、もうやめようと思ったんですけど、『春よ、来い』『ロシアより愛を込めて』っていうプログラムを両方やったとき、『ああ、やっぱりスケート好きだな』と思った」
そのうえで、「みなさんのためだけじゃなくて、自分のためにも競技を続けていいのかなっていう気持ちになった」と前を向けるようになったと語っている。
そして、この発言から1年後、羽生は全日本を連覇して北京五輪の代表に内定する――。
北京五輪のエキシビション終了後、羽生は今後の進退について語った。「フィールドは問わない。もっとみなさんが見たいと思ってもらえるような演技をしたい」として、アイスショーか競技かの明言は避けた。どんな形であれ、羽生が氷の上で見せる演技を、ファンは待ち続けている。
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