山川穂高(31)が取った行動は、プロ野球ファンの納得を得られるのだろうか――。昨年の二冠王で、通算218本塁打の西武ライオンズ・山川が、11月14日、フリーエージェント権の行使を発表した。
山川は今年5月11日、「文春オンライン」で、知人女性への強制性交の疑いを報じられ、翌日に一軍登録を抹消された。5月23日に書類送検され、8月29日に不起訴になったが、9月4日に球団から「無期限で公式戦への出場停止」が発表されていた。
登録抹消後も、山川は三軍の施設で練習を続け、秋には若手主体のフェニックスリーグに出場。6月21日の西武ホールディングスの株主総会では「起訴、不起訴にかかわらず、解雇を考えていいのでは」という意見も出たが、球団は山川を見捨てなかった。
スポーツ紙のベテラン記者は、今回のFA宣言についてこう考える。
「大騒動を起こしながら、あまりに不義理だと思います。西武への残留に含みを持たせていますが、移籍の意思がなければ宣言などしないでしょう。本来なら罰金を取られてもおかしくないのに、西武は1円も取っていない。そこにも球団の温情を感じます」
山川のように書類送検、不起訴になった例は過去にもある。その選手はどのような道をたどったのか。
2017年7月、巨人の山口俊が都内の病院で警備員にケガを負わせ、8月18日に傷害の疑いで書類送検された。23日に不起訴になったが、巨人はシーズン終了までの出場停止処分を下し、罰金と減俸も科した。総額は1億円を超えたといわれている。
「山口は1億円も失ったのに対して、山川は金銭的な痛手はありません。今回の騒動は本人だけでなく、西武球団のイメージも悪化させた。それでも三軍の練習に参加させ、秋にはフェニックスリーグに出場させた。遠征費や滞在費などは、すべて球団のお金でまかなわれているわけですよね。
山川の騒動で、今季チームは5位と低迷し、観客動員数やグッズ売り上げにも影響はあったはずです。また、フェニックスリーグに山川が出れば、若手はそのぶんチャンスを失っている。西武は山川が来季他球団で活躍するために、実戦の機会を与えたわけではないでしょう」(前出・ベテラン記者)
もちろん、山川自身も騒動について責任を感じているだろう。FA権行使についての文章では《皆様に多大なる不快な気持ち、不信感を生んでしまった一連の出来事を通じて、ただ野球をするということだけではなく、関係する全てのことを、自分ひとりで考え、また、家族と考えさせて頂きました》と反省を述べている。
「騒動について、山川なりの主張もあるでしょう。しかし、自らの女癖の悪さが騒動を招いたのは事実。自責の念があるのなら、まずは西武で恩返しをすべき。それが筋だと思いますよ」(同前)
山口は2019年に、最多勝で巨人のリーグ優勝に貢献し、そのオフに渡米。チームにかけた迷惑を償ったうえで、移籍している。
「過去に、FAでイメージを悪くした選手はいます。オリックスと交渉が決裂して、育成で拾ってくれた中日に2年在籍した後に楽天へ移籍した中村紀洋、オリックスからのトレードで阪神に1年在籍した後にダイエーに移った松永浩美はその代表かもしれません。
2人は、正当な権利行使なのにバッシングされました。今回の山川も、自ら勝ち取った権利であることは間違いないですけどね……」(球界関係者)
山川はFAについて《私が宣言させて頂くことで、何より、私自身のこれからの野球人生に対して、重い責任を持ち続けることの覚悟であることを、どうか少しでもご理解いただけたら幸いです》と声明文に綴った。ファンはどう受け止めるのか――。
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