10月11日に環境省が発表した「クマによる人身被害件数」が話題になっている。
4~9月の速報値で、28人の秋田県、27人の岩手県を中心に東北地方で多数の被害が出ており、15道府県で計109人に被害が出ている。「共同通信」が10月14日に報じたところによると、この数値は月別統計を始めた2007年度以降の同時期比で、最多だったという。
「特に秋田県の28人は、過去最多だった2017年度の20人を超え、非常に多くなっております。10月4日から5日にかけて、秋田県美郷町では畳店の作業小屋に3頭のクマによる “立てこもり事件” が起きました。人身被害は出ませんでしたが、大きなニュースになりました。9日には、秋田市の住宅街で、クマによる人身被害が連続して発生し、計5人がケガを負っています」(社会部記者)
ここ数年、全国的にクマの出没が、非常に増えている。今や住宅街にクマが出没することも、珍しくなくなっている。
本誌は2021年6月、札幌市東区で発生した「ヒグマ襲撃事件」の被害者で、会社員の安藤伸一郎さんを取材していた。
出没したのは、体長約1.6mの雄ヒグマ。安藤さんら4人を襲って逃走し、8時間後に駆除された。
「生まれも育ちも東区ですが、ここらでクマが出たなんて、それまで聞いたことがなかったです」と安藤さんが話すように、襲撃された現場も、到底、ヒグマが出没するとは思われていない住宅街だった。
ヒグマは、安藤さんの背後から忍び寄っていた。
「足音もなく、いきなり後ろからドンッときて倒されました。車のような硬さではなかったので、人がぶつかってきたのかと思い、文句を言おうと思ったんです。
そしたら右腕を噛まれ……目が合ったときに、初めて “相手” がクマだとわかりました。その瞬間、死ぬかもしれないと感じて、ずっと『痛い』『助けてー』と、大声で叫んでいました」(安藤さん)
一部始終を近隣住民が撮影しており、SNSやテレビで安藤さんが体験した「ヒグマの恐怖」は瞬く間に伝えられた。
「最初の衝撃では、もう何が起きたのかまったくわからず……。一撃で右側の肋骨が6本折れて、右肺には穴が空いて肺気胸に。背中を80針、両腕両足を60針縫いました。息苦しく骨が折れて痛いうえに、噛まれた箇所からの出血もひどかったです。
いったんクマは離れたのですが、すぐに戻ってきて再び襲われました。辛うじて丸まって、頭部や内臓を防御する姿勢が取れたのはよかったです。病院の先生からは『意識がなかったら、そのまま喰われて死んでいたよ』と言われましたね」(同)
今は仕事にも復帰できるようになった安藤さんだが、膝にサポーターを着けた左脚をかばうように歩いていた。
「これ(サポーター)がないと仕事ができないんです。神経が痺れている感じで……。もう治らないんじゃないかと」
と、現在も続く悲痛な心境を安藤さんは話していた。
北海道で次々と畜産農家の牛を襲い、人々を震撼させた「OSO18」は駆除され、そのニュースは全国を駆けめぐった。
しかし、まだクマの恐怖が収まる気配はない――。
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