名門「フジクラ」製のiPhone部品が中国“闇市場”に流出していた!過去には巨額賠償で倒産した企業も
「約5年前、フジクラの上海にあるグループ会社に、部品の流出を防ぐため、製品を原料に戻して再生利用する『マテリアルリサイクル』の請負契約を提案したんです」
「ですがフジクラからは、『すでに香港の処理業者に委託し、問題なく推移している』と断わられました。しかし2023年7月、香港の電気街・観塘(クントン)の中古マーケットで、『フジクラ』のロゴがある中古部品が売られているのを発見したのです」(村松氏)
「チップのある部品は、そのままiPhoneの修理業者に転売されます。ない部品は、別ルートから調達したチップを人力でハンダづけし、部品に仕上げてから転売されているようです。そのほか、金属類を資源として抽出する用途としても需要があります」(村松氏)
「2023年8月に、香港に隣接する深センの華強北(フアチャンベイ)を視察しました。華強北は秋葉原の30~40倍の規模があり、スマホの中古品や部品を扱っている小さな商店が、何棟ものビルの中に密集しています」
「限りなく純正品に近い品が多数ですが、粗悪品の流通にも歯止めがかかりません。アップルや日本メーカーのロゴがプリントされていても、偽造された部品である可能性は大いにあります」(木暮氏)
「これは、外見だけで判断すればiPhoneの『タッチディスプレイコントローラー』と呼ばれる部品です。ディスプレイをタッチすると、指の静電気をデジタル信号に変えて、CPUに伝えます。画面に『あ』と書けば、『あ』と手書き文字が表示されますよね。なかでもiPhoneは、ディスプレイの隅から隅まで高精度で認識します」
「ブロードコム社製の『BCM5976』というチップが2個入っていました。iPhone12用の、100%本物です」
「チップは、その前段階である『ウエハー』という薄い板の時点で、サプライチェーンのなかに組み込まれています。アップルのチップの管理は非常に厳しく、偽物はすべてブロードコム以外の代替品を使わざるを得ません。話を聞いたときは、中国製の激安チップが入った偽物だと思っていたのですが、まさか本物だったとは……」(同前)
「部品がフジクラから流出したとしても、同社の社員が関与したとは考えにくいと思います。むしろ、処理業者がフジクラから処理費用を徴収したうえで、部品を横流ししてさらに利益を得ていたのではないでしょうか」
「チップのない部品は、フジクラグループで製造された『不良品』です。製品としての機能を果たしておらず、本来『部品』という言い方は正確ではありません」
「フジクラおよびグループ会社としては、産業廃棄物としてちゃんと業者に引き渡しているので、そこまでの責任ということになると思うんです。その先、業者が何をしたかというのは、我々は責任を負わない。業者との信頼関係で廃棄をしているということです。業者がたとえばひとつをくすねちゃったとなっても、そこはなんともコメントのしようがありません」(同前)
「アップルとフジクラとの契約には、不良品を廃棄する際に外部に流出しないよう、フジクラが適切な処理業者を選任・監督する義務が盛り込まれていると思われます。もし、フジクラが処理現場に立ち会ったり、業者に報告書を出させたりするなどの監督義務を怠っていたのであれば、アップルから損害賠償を請求される可能性は否定できません」