2021年に中国の原発から放出された排水に含まれる放射性物質トリチウムの量が、17カ所の観測地点のうち、7割を上回る13カ所で、福島第1原発から放出予定の処理水の上限を超えていたことが中国の公式資料でわかった。8月8日、共同通信が報道した。
『中国核能年鑑』は13原発から排水されたトリチウムなどの放射性物質に関し、17カ所の観測データを記載している。たとえば浙江省の秦山原発は、2021年の1年間に218兆ベクレルのトリチウムを放出していた。福島第1原発の放出計画が設ける年間上限「22兆ベクレル」の約10倍にあたる。
福島第1原発処理水の放出について、日本政府は「環境や人体への影響は考えられない」との立場だ。国際原子力機関(IAEA)も「国際的な安全基準に合致している」と放出の妥当性を認めている。
だが、中国政府は「処理水」を「核汚染水」と表現し、危険性を大々的に宣伝。7月からは、日本の水産物に対する全面的な放射性物質検査を始め、放出前から事実上の輸入規制を課す対抗措置を開始した。
7月21日には、松野博一官房長官が記者会見で、中国の対応を「強く懸念する」と述べ、「中国側に対しては、科学的根拠に基づいた議論をおこなうよう強く求めていく」と語った。
だが、中国側が対応を改める様子はない。
時事通信の報道によると、8月8日、ウィーンで開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会で、福島第1原発の処理水放出計画について、中国の代表は改めて「放出計画を強行するな」と訴えた。IAEAの審査について「権限が限られているため『汚染水』のデータの信頼性や正確性を確認しなかった」などと主張した。
一方で、韓国は「IAEAが放出のあらゆる段階で徹底した監視をおこなうことに期待している」と述べ、ニュージーランドの代表は「(IAEAに)全幅の信頼を置いている」と強調。米英もIAEAの立場を強く支持し、放出に理解を示すなど、中国だけが頑強に反対する構図が鮮明になっている。
松原仁衆院議員は、8月9日、自身の「X」(旧Twitter)にこう書きこんだ。
《国家が科学を否定するかのような態度を取る中国。日本を批判する前にトリチウム濃度の高い自国の処理水問題に向き合ったらどうか。》
SNSでは、中国への対抗措置を求める声まであがっている。
《トリチウムの海洋放出量は中国の方が多いんだから対抗措置として中国からの海産物も全品検査すれば良いんじゃない》
《我が国も対抗措置としてチャイナからの農産物に規制をかけるべきだ》
《日本政府は、すみやかに中国の水産物を輸入規制しろ!!》
自民党の甘利明前幹事長は、8月6日にフジテレビ番組で、「政府の気持ちを代弁するなら、『あなたにだけは言われたくない』ということだと思う」と述べ、中国の主張に反論した。中国が理不尽な主張を続けるなら、日本で反発が強まりかねない。
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