ヴィーガンのインフルエンサー、ジャンナ・サムソノヴァさんが、7月21日にマレーシアの病院で亡くなった。原因は「餓死」とみられている。
ジャンナさんは世界中で3万人のフォロワーを持つ人気インフルエンサー。彼女は自身が実践している、加熱処理がされていない完全菜食主義の生活を配信していた。『DailyMail』によると、彼女は少なくとも4年間、「フルーツとヒマワリの芽、フルーツスムージー、ジュース」だけを口にする生活を送っていたといい、直近6年間は、水分をまったく摂取していなかったという。さらに友人からは「彼女は約7年間、ドリアンとジャックフルーツしか食べない生活を送っていた」という証言も飛び出した。
ジャンナさんの極端な生活について、函館稜北病院総合診療科の舛森悠医師が、問題点を、こう指摘する。
「食べ物から水分を摂取すること自体は、理論上は可能です。しかし、1日に必要な水分を摂取するために、現実的ではない量の食べ物の摂取が必要になると考えられます。
しかしどんな食べ物にも、致死量があります。たとえば、水分を摂取するためにスムージーなどを飲みすぎてしまうと、果物の糖分を多く摂りすぎてしまったり、ミネラルが過多になったりと、栄養バランスが崩れます。結果、命に危険をきたす可能性も十分に考えられます。
また、1日に必要なタンパク質の量は『体重の1000分の1』と言われています。ドリアンに含まれるタンパク質は、100g当たり2.3gですから、 体重40kgの人がドリアンのみからタンパク質を摂取する場合、2kg近いドリアンを摂取しなければなりません。この生活は、現実的とは考えられませんよね……」
ほかにも舛森医師は「過度なヴィーガン生活は危険」と警鐘を鳴らす。
「ヴィーガンの方に欠乏しやすい栄養素として、ビタミンB12が有名です。ビタミンB12は、おもに動物性食品に含まれています。肉類・魚類・貝類・卵・乳製品などに多く含まれており、 ヴィーガンの方々は摂取することが難しいのです。
ビタミンB12が欠乏すると、重篤な貧血の原因になったり、 神経に障害が起き、認知症のような症状、 体の痺れをきたしたりする原因にもなります。そして最悪の結果、死につながる可能性は十分にあります」
極端な食事制限について「ここまで突飛な生活は送らない」と、他人ごとにしてはいけない、と舛森医師はいう。一般的な人々が簡単に実践しうる生活スタイルも、医学的な根拠が十分でないことが多いからだ。
「まず、現在流行している『ファスティング(一定期間の断食)』ですが、たしかに1日で摂取できるトータルのカロリーが減って、ダイエット効果はあるかもしれません。とはいえ、老化予防に効果があった、死亡率が減ったなどといった、信頼性の高いデータはまだ蓄積されていません。
また、ファスティングによって、血糖値が低下してイライラしたり、頭痛や冷や汗が出てきたりして、最悪の場合、意識を失ってしまうリスクもあります。ファスティングをおこないたい場合は、無理をせず、かかりつけの医師などに相談したうえでおこなうほうが安全と考えられます。
また、ヴィーガン生活では、先ほど述べたビタミンB12不足の問題が深刻です。海苔などからもビタミンB12は摂取できるようですが、これもやはり相当な量の摂取が必要でしょう。ヴィーガンの方に、欠乏しやすい栄養素はサプリメントで補充することを推奨する報告もあります。栄養素の欠乏症状が出てきていないか、急激に体重が減りすぎていないか、などを自身でチェックしつつ、少しでもおかしいと思ったら医師に相談することが肝要だと思います」
健康を目指す行動が、逆に健康を害することになっては問題だ。
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